会社設立を考えたとき、まず気になるのが「資本金はいくら必要か」という点ではないでしょうか。
結論から言うと、現在の法律では資本金1円から会社を設立できます。
しかし、安易に金額を決めると、融資や取引で不利になるなど後で後悔する可能性があります。
本記事では、なぜ1円で設立できるのかという背景から、最適な資本金額を決める具体的な5ステップ、1,000万円未満で得られる節税メリット、設立にかかる費用まで網羅的に解説します。
あなたの事業に最適な資本金額を見つけ、スムーズな会社設立を実現しましょう。
会社設立の最低資本金は法律上1円から可能
「会社を設立したいけれど、資本金はいくら用意すればいいのだろう?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、現在の法律では、株式会社も合同会社も資本金1円から設立することが可能です。
これは、かつて存在した「最低資本金制度」が撤廃されたことによるものです。
以前は、会社を設立するためにまとまった自己資金が必要でした。
具体的には、株式会社を設立するには最低でも1,000万円、有限会社(現在は新規設立不可)でも300万円の資本金が法律で義務付けられていたのです。
この制度が、起業を目指す人々にとって大きなハードルとなっていました。
しかし、2006年5月1日に施行された会社法によってこの最低資本金制度は撤廃され、誰でも少ない元手でチャレンジできる環境が整いました。
これにより、いわゆる「1円起業」が制度上は可能になったのです。
| 会社形態 | 改正前(2006年4月まで)の最低資本金 | 改正後(2006年5月以降)の最低資本金 |
|---|---|---|
| 株式会社 | 1,000万円 | 1円以上 |
| 有限会社(※) | 300万円 | 1円以上(特例有限会社として存続) |
※有限会社は会社法施行に伴い廃止され、新たに設立することはできません。既存の有限会社は「特例有限会社」として存続しています。
ただし、注意しなければならないのは、「法律上1円で設立できる」ことと「事業を円滑に進められる」ことは全くの別問題であるという点です。
資本金は、会社設立時の登記費用とは別に、設立後の事業活動を支えるための元手となる資金です。
例えば、事務所の賃貸契約にかかる初期費用、パソコンや備品の購入費、当面の運転資金などがこれにあたります。
もし資本金を1円で設立した場合、会社の銀行口座には1円しか入金されません。
これでは、事業に必要な費用を支払うことができず、設立直後から資金ショートに陥ってしまいます。
つまり、法律上は1円で会社を設立できても、実際の事業運営は不可能に近いということです。
したがって、会社設立を検討する際には、単に「法律上の最低額は1円」という情報だけで判断するべきではありません。
資本金は、単なる設立要件ではなく、会社の体力や信用度を示す重要な指標でもあるのです。
次の章以降で解説する資本金の適切な決め方や、資本金額が与える影響を正しく理解し、ご自身の事業計画に合った金額を設定することが成功への第一歩となります。
最低資本金制度が撤廃された背景

現在では資本金1円から会社を設立できますが、かつては会社を設立するためにまとまった資本金を用意する必要がありました。
この「最低資本金制度」がなぜ撤廃されたのか、その背景を理解することは、ご自身の会社の資本金額を決める上でも重要な知識となります。
結論から言うと、最低資本金制度が撤廃されたのは、起業のハードルを大幅に引き下げ、新規ビジネスの創出を促すことで日本経済全体の活性化を図るためです。
この大きな転換点の背景には、2006年の「会社法」改正がありました。
2006年の会社法改正がポイント
最低資本金制度の撤廃を決定づけたのが、2006年5月1日に施行された「新会社法」です。
この法改正により、それまで起業家にとって大きな障壁となっていた資本金に関する規制が大きく緩和されました。
改正前の法律(旧商法)では、会社形態ごとに以下のような最低資本金額が定められていました。
- 株式会社:1,000万円
- 有限会社:300万円
このように、会社を設立する第一歩として、個人が用意するには非常に高額な資金が必要でした。
この制度が、意欲や優れたアイデアを持つ人の起業を妨げる一因になっていると指摘されていたのです。
そこで政府は、より多くの人がチャレンジしやすい環境を整えるため、会社法を抜本的に見直しました。
その結果、最低資本金制度は完全に撤廃され、理論上は資本金1円でも株式会社を設立できるようになったのです。
法改正による主な変更点を以下の表にまとめました。
| 項目 | 改正前(旧商法時代) | 改正後(2006年〜現在) |
|---|---|---|
| 株式会社の最低資本金 | 1,000万円 | 1円以上 |
| 有限会社の最低資本金 | 300万円 | 制度廃止(新規設立は不可) |
| 新たな会社形態 | なし | 合同会社(LLC)の新設 |
この改正では、最低資本金制度の撤廃と同時に「有限会社」という会社形態が廃止されたことも大きなポイントです。
その代わりに、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルにした「合同会社」が新設されました。
合同会社は、設立費用の安さや経営の自由度の高さから、個人事業主からの法人成りや小規模なビジネスを始める際の選択肢として人気を集めています。
このように、2006年の会社法改正は、誰もが事業を始めやすいように法的なインフラを整備し、多様な起業を促進することを目的としていました。
この流れを理解することで、「法律上は1円で可能だが、事業の実態に合わせて適切な資本金額を設定する必要がある」という現代の資本金の考え方につながっていくのです。
資本金を1円にするメリットとデメリット

2006年の会社法改正により、会社の最低資本金制度は撤廃され、法律上は資本金1円からでも会社を設立できるようになりました。
しかし、資本金を1円に設定することには、手軽さというメリットがある一方で、事業運営において看過できない大きなデメリットも存在します。
安易に1円で設立すると後で苦労する可能性があるため、双方を正しく理解した上で判断することが極めて重要です。
メリット 手軽に会社設立ができる
資本金1円で会社を設立する最大のメリットは、その手軽さにあります。
まとまった自己資金を用意する必要がないため、起業のハードルが劇的に下がり、誰でも法人格を取得しやすくなりました。
例えば、以下のような方にとっては大きな利点となるでしょう。
- 自己資金は少ないが、すぐに事業化したい優れたアイデアを持っている方
- まずはスモールスタートで事業を始め、徐々に規模を拡大していきたい方
- フリーランスとして活動していたが、取引の都合上、法人格が必要になった方
資本金の準備にかかる時間や労力を省略できるため、事業計画の策定やサービス開発といった、より本質的な業務に集中できる時間が増える点も魅力です。
登記手続き自体は資本金の額にかかわらず同じですが、その前段階である資金準備の負担がほぼゼロになるため、スピーディーな会社設立が実現します。
デメリット 社会的信用が得にくい
資本金1円の会社が直面する最も大きなデメリットは、社会的な信用の低さです。
資本金の額は、登記事項証明書(登記簿謄本)を見れば誰でも確認できます。
多くの企業や金融機関は、資本金の額をその会社の財務的な体力や事業への本気度を測る指標の一つとして見ています。
資本金が1円であることは、「事業を継続していくための資金力に乏しいのではないか」「経営に対する責任感が薄いのではないか」といったネガティブな印象を与えかねません。
特に、法人を相手にするBtoBビジネスにおいては、新規取引を開始する際の与信調査で不利に働くことが多く、契約に至らないケースも考えられます。
大手企業の中には、取引先の与信管理基準として最低資本金額を設定しているところも少なくありません。
デメリット 融資審査で不利になる可能性がある
会社の設立直後や事業拡大の際には、金融機関からの融資を検討する場面が多くあります。
しかし、資本金が1円の場合、この融資審査で不利になる可能性が非常に高くなります。
日本政策金融公庫の新創業融資制度や、地方自治体の制度融資など、創業者向けの融資制度は多数存在しますが、いずれの審査においても「自己資金」は極めて重要な評価項目です。
資本金は、客観的に証明できる自己資金の最たるものです。
融資審査において自己資金の額は、事業の継続性や返済能力を判断する重要な指標と見なされるため、資本金が1円だと「創業準備が不十分」「事業に対する経営者のコミットメントが低い」と判断され、融資を受けられない、あるいは希望額を大幅に減額されるリスクがあります。
これらのデメリットが具体的にどのような影響を及ぼすか、以下の表にまとめました。
| 影響を受ける場面 | 資本金1円の場合に懸念されること |
|---|---|
| 新規取引先の開拓(特にBtoB) | 与信調査の段階で支払い能力を疑問視され、取引開始を断られる、または現金取引を求められる可能性がある。 |
| 金融機関からの融資 | 自己資金が極端に少ないと判断され、融資審査で著しく不利になる。希望額の融資が受けられない、または融資自体を断られるリスクが高い。 |
| オフィスや店舗の賃貸契約 | 家賃の支払い能力に不安を持たれ、保証会社の審査に通らない、または追加の保証金を要求されることがある。 |
| 人材採用 | 求職者が会社の安定性に不安を感じ、優秀な人材の応募が集まりにくくなる可能性がある。 |
| 許認可の取得 | 建設業、人材派遣業、旅行業など、一部の業種では許認可の要件として一定額以上の資本金(財産的基礎)が定められており、1円では取得できない。 |
このように、資本金1円での設立は初期費用を抑えられる一方で、その後の事業展開において多くの障壁を生む可能性があります。
次の章では、こうしたデメリットを回避し、事業をスムーズに軌道に乗せるための適切な資本金の決め方を解説します。
知らないと損する会社設立時の資本金の決め方5ステップ

会社の資本金をいくらに設定するかは、会社設立における最も重要な意思決定の一つです。法律上は1円から設立可能ですが、安易に決めてしまうと、後々の資金繰りや事業展開で思わぬ壁にぶつかる可能性があります。
ここでは、将来を見据えた適切な資本金額を決めるための具体的な5つのステップを、初心者の方にも分かりやすく解説します。
このステップに沿って検討すれば、あなたの事業に最適な資本金額が見えてくるはずです。
ステップ1 設立後3ヶ月から6ヶ月の運転資金を計算する
会社設立後すぐに売上が立ち、利益が生まれるとは限りません。
むしろ、事業が軌道に乗るまでは赤字が続くのが一般的です。
その間の事業活動を支えるのが「運転資金」です。
資本金は、この事業が軌道に乗るまでの「体力」そのものであり、運転資金を賄うための重要な原資となります。
まずは、会社設立後、最低でも3ヶ月から6ヶ月間、売上がゼロでも事業を継続できるだけの運転資金がいくら必要になるかを計算しましょう。
運転資金は、主に「固定費」と「変動費」に分けられます。
- 固定費:売上の増減に関わらず毎月発生する費用(事務所家賃、役員報酬・給与、水道光熱費、通信費、リース料など)
- 変動費:売上の増減に比例して変動する費用(商品の仕入費、原材料費、外注費、広告宣伝費など)
これらの費用をリストアップし、1ヶ月あたりの合計額を算出します。
その金額の3〜6ヶ月分が、資本金の一つの目安となります。
| 費目 | 月額費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 事務所家賃 | 100,000円 | 敷金・礼金などの初期費用は別途考慮 |
| 役員報酬 | 250,000円 | 自身の生活費として |
| 水道光熱費・通信費 | 30,000円 | 電気、ガス、水道、インターネット、電話代など |
| 広告宣伝費 | 50,000円 | Web広告やチラシ作成など |
| その他経費 | 70,000円 | 交通費、消耗品費、外注費など |
| 月額合計 | 500,000円 | |
| 運転資金(3ヶ月分) | 1,500,000円 | 500,000円 × 3ヶ月 |
| 運転資金(6ヶ月分) | 3,000,000円 | 500,000円 × 6ヶ月 |
このケースでは、安心して事業をスタートするためには、少なくとも150万円、できれば300万円程度の資本金を用意することが望ましいと言えるでしょう。
ステップ2 必要な許認可の資本金要件を確認する
事業内容によっては、事業を開始するために国や都道府県から「許認可」を得る必要があります。
この許認可の中には、安定した事業運営能力を示す「財産的基礎(自己資本)」として、一定額以上の資本金が要件として定められている場合があります。
もし、ご自身の事業が許認可の対象であるにもかかわらず、資本金要件を満たしていなければ、そもそも事業を始めることすらできません。
会社設立手続きを進める前に、必ず管轄の行政庁のウェブサイトなどで最新の要件を確認してください。
| 許認可の種類 | 主な資本金(財産的基礎)要件 | 対象となる事業 |
|---|---|---|
| 一般建設業許可 | 自己資本の額が500万円以上であること | 軽微な工事を除く建設工事を請け負う事業 |
| 特定建設業許可 | 資本金2,000万円以上、かつ自己資本4,000万円以上など | 発注者から直接請け負う1件の工事代金が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)の下請契約を締結する場合 |
| 労働者派遣事業許可 | 資産総額が2,000万円以上(うち現金・預金が1,500万円以上) | 人材派遣を行う事業 |
| 一般貨物自動車運送事業許可 | 事業開始に要する資金(車両費、人件費、燃料費など)を確保していること(地域により金額の目安あり) | トラックなどで貨物を運送する事業 |
これらの要件はあくまで一例です。
詳細は必ずご自身の事業に関連する許認可の最新情報を確認することが不可欠です。
ステップ3 日本政策金融公庫などの融資制度を考慮する
自己資金だけで事業資金のすべてを賄うのは簡単なことではありません。
多くの起業家が、日本政策金融公庫などの金融機関からの「創業融資」を活用します。
融資審査では、事業計画の妥当性や将来性に加えて、「自己資金をどれだけ準備しているか」が非常に重要な評価ポイントとなります。
特に、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」では、「創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」という要件があります。
ここでいう自己資金の最も明確な証明となるのが、会社の資本金です。
資本金の額が、受けられる融資額や審査の通りやすさに直結すると言っても過言ではありません。
一般的に、融資希望額に対して自己資金(資本金)の割合が高いほど、金融機関は「起業に対する本気度が高い」「計画的に準備を進めている」と評価し、融資を受けやすくなる傾向があります。
例えば、300万円の資本金があれば、その数倍の融資を引き出せる可能性も出てきます。
融資の活用を視野に入れているのであれば、希望する融資額から逆算して資本金額を決めるというアプローチも有効です。
ただし、一時的に他人から借りてきて資本金に見せかける「見せ金」は絶対に行ってはいけません。
発覚した場合は融資が受けられないだけでなく、信用を大きく損なうことになります。
ステップ4 対外的な信用度を意識した金額を設定する
資本金は、会社の登記事項証明書(登記簿謄本)に記載され、誰でも閲覧することができます。
そのため、資本金は、取引先や金融機関に対する「会社の顔」としての役割も担います。
資本金が1円や数万円など極端に低い場合、新規の取引先、特に大企業との取引を希望する際に、「この会社は支払い能力に問題がないだろうか」「事業を継続する体力があるのだろうか」と不安視され、与信審査で不利になったり、取引を敬遠されたりする可能性があります。
明確な基準はありませんが、一般的には以下のようなイメージを持たれることが多いです。
- 100万円未満:個人事業主の延長と見られがち。信用面で不安視される可能性がある。
- 100万円~300万円:スモールビジネスを始める際の一般的な金額。多くの企業がこの範囲で設立している。
- 300万円~1,000万円未満:ある程度の事業規模や体力がある企業という印象を与え、対外的な信用度が高まる。
もちろん、事業内容や取引先の規模によって求められる信用度は異なります。
しかし、将来的な事業拡大や大手企業との取引を見据えるのであれば、ある程度の見栄えも意識して、少なくとも100万円以上の資本金を設定することをおすすめします。
ステップ5 資本金を決める際の注意点を把握する
これまでの4つのステップを踏まえ、資本金の額を決める際の最終的な注意点と知っておくべき知識を解説します。
資本金は後から増減(増資・減資)できる
資本金の額は、会社設立後も変更することが可能です。
事業が拡大し、さらなる資金が必要になった場合は「増資」を、経営再建などの目的で資本金を減らす場合は「減資」を行います。
ただし、どちらの手続きにも株主総会の決議や法務局への変更登記申請が必要となり、登録免許税などの費用も発生します。
特に増資の場合、増加する資本金の額の1,000分の7(最低3万円)の登録免許税がかかります。
後からの変更には手間とコストがかかるため、設立時にある程度余裕を持った金額を設定しておくことが合理的です。
現物出資も資本金にできる
資本金は現金で払い込む「金銭出資」が一般的ですが、車やパソコン、不動産、有価証券といった「モノ」で出資する「現物出資」も可能です。
手元の現金が少なくても、事業に必要な資産を活用して資本金を増やすことができるのがメリットです。
ただし、現物出資を行う場合は、その財産の価額を適切に評価する必要があり、手続きが複雑になります。
特に、評価額が500万円を超える場合は、原則として裁判所が選任する検査役による調査が必要となるため、利用する際は司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。
資本金の払い込みは発起人個人の口座へ
会社設立時に意外と間違えやすいのが、資本金の払い込み先です。会社設立の登記申請時点では、まだ会社の法人口座は開設できません。
そのため、資本金は、発起人(会社を設立する人)の代表者個人の銀行口座に、各出資者が自分の名前で振り込む必要があります。
そして、その振り込みが記帳された通帳のコピーが、資本金が確かに払い込まれたことを証明する「払込証明書」として、設立登記の際に必要となります。
自分の口座に自分のお金を入れる場合も、預け入れではなく「振込」として、出資者名が記帳されるように手続きしましょう。
資本金の額で変わる税金の話 節税メリットを解説

会社設立時の資本金の額は、その後の税金の支払いに大きな影響を与えます。
特に「1,000万円」という金額は、税制上の重要なボーダーラインです。この基準を知っているかどうかで、設立後のキャッシュフローが大きく変わる可能性があります。
ここでは、資本金の額によって受けられる節税メリットについて、具体的に解説します。
資本金1000万円未満で消費税が最大2年間免除に
会社設立における最も大きな節税メリットの一つが、消費税の免税です。
資本金を1,000万円未満に設定することで、設立から最大2年間、消費税の納税が免除される可能性があります。
原則として、資本金1,000万円未満で設立された法人は、設立第1期目と第2期目は「免税事業者」となり、売上にかかる消費税の納税義務がありません。
例えば、年間売上が880万円(うち消費税80万円)の場合、課税事業者であれば80万円を納税する必要がありますが、免税事業者であればその納税が不要になります。
これは、設立間もない資金繰りが厳しい時期において、非常に大きなメリットです。
ただし、この免税措置には注意すべき例外規定が存在します。
特定期間の課税売上高による判定
設立1期目の上半期6ヶ月間(これを「特定期間」といいます)の課税売上高が1,000万円を超えた場合、設立2期目から消費税の「課税事業者」となり、納税義務が発生します。
さらに、課税売上高の代わりに給与等支払額で判定することも可能で、特定期間の給与等支払額が1,000万円を超えた場合も同様に2期目から課税事業者となります。
インボイス制度開始による影響
2023年10月から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)も考慮に入れる必要があります。
免税事業者のままでは、適格請求書(インボイス)を発行できません。
すると、取引先(買手側)が仕入税額控除を受けられなくなり、取引上不利になる可能性があります。
そのため、主な取引先が課税事業者である場合は、設立当初からあえて課税事業者を選択し、適格請求書発行事業者の登録をするという戦略も有効です。
自社のビジネスモデルや主要な取引先を考慮し、免税のメリットとインボイスを発行できないデメリットを比較検討することが重要です。
法人住民税の均等割も考慮する
法人が納める税金には、国に納める「法人税」のほかに、事業所のある都道府県と市町村に納める「法人住民税」があります。
法人住民税は、利益に応じて課税される「法人税割」と、会社の規模に応じて定額で課税される「均等割」で構成されています。
重要なのは「均等割」です。
均等割は、たとえ事業が赤字であっても、会社が存在する限り支払わなければならない税金です。
そして、この均等割の金額は、資本金の額と従業員数によって変動します。
具体的に、資本金の額が1,000万円を境に税額が変わるケースが多く、資本金が1,000万円を超えると均等割の負担が大きくなります。
以下は、東京都23区内に事業所がある場合の法人住民税均等割の税額例です。
| 資本金等の額 | 区内の従業員数 | 税額(都民税+区民税) |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 50人以下 | 70,000円 |
| 1,000万円以下 | 50人超 | 140,000円 |
| 1,000万円超 1億円以下 | 50人以下 | 180,000円 |
| 1,000万円超 1億円以下 | 50人超 | 200,000円 |
| 1億円超 10億円以下 | 50人以下 | 290,000円 |
上記のように、資本金が1,000万円を超えると、たとえ従業員が50人以下であっても均等割の額が7万円から18万円へと跳ね上がります。
この負担は毎年続くため、明確な理由がない限り、資本金を1,000万円以下に抑えることが賢明な選択と言えるでしょう。
なお、均等割の税額は事業所のある自治体によって異なるため、設立前に必ず確認することをおすすめします。
会社設立時に資本金以外で必要になる費用一覧

会社を設立する際には、事業の元手となる資本金とは別に、設立手続きそのものにかかる「法定費用」や、事業開始の準備に必要な「その他の費用」が発生します。
これらの費用は、設立する会社形態(株式会社か合同会社か)や、手続きを自分で行うか専門家に依頼するかによって大きく変動します。
ここでは、具体的にどのような費用がいくらくらいかかるのかを詳しく解説します。
株式会社の設立費用
株式会社を設立する場合、法律で定められた「法定費用」だけでも最低約20万円が必要です。
これは手続きをすべて自分で行った場合の金額です。
| 費用項目(法定費用) | 金額(目安) | 支払い先 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 定款に貼る収入印紙代 | 40,000円 | 税務署(印紙を購入) | 紙の定款で作成する場合に必要。 |
| 定款の認証手数料 | 30,000円~50,000円 | 公証役場 | 資本金の額によって変動します。通常は50,000円です。 |
| 登録免許税 | 最低150,000円 | 法務局 | 資本金の額の0.7%。ただし、150,000円に満たない場合は150,000円となります。 |
| 合計(紙定款の場合) | 約220,000円~ | – | – |
上記の法定費用は、工夫次第で安く抑えることが可能です。特に大きな節約ポイントは定款の作成方法です。
紙の定款ではなく「電子定款」で作成すれば、収入印紙代の40,000円が不要になります。
電子定款の作成には専用のソフトや機器が必要ですが、多くの司法書士や行政書士は電子定款に対応しているため、専門家に依頼することで結果的に費用を抑えられるケースもあります。
法定費用以外にも、以下のような費用が発生する可能性があります。
- 会社の実印・銀行印・角印などの印鑑作成費用:5,000円~30,000円程度
- 会社の印鑑証明書・登記簿謄本の取得費用:1通あたり数百円程度
- 司法書士や行政書士への設立代行手数料:50,000円~100,000円程度
合同会社の設立費用
合同会社は、株式会社に比べて法定費用を大幅に抑えられるのが大きなメリットです。
最も大きな違いは、合同会社では「定款の認証」が不要である点です。
| 費用項目(法定費用) | 金額(目安) | 支払い先 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 定款に貼る収入印紙代 | 40,000円 | 税務署(印紙を購入) | 紙の定款で作成する場合に必要。 |
| 定款の認証手数料 | 0円 | – | 合同会社は定款認証が不要です。 |
| 登録免許税 | 最低60,000円 | 法務局 | 資本金の額の0.7%。ただし、60,000円に満たない場合は60,000円となります。 |
| 合計(紙定款の場合) | 約100,000円~ | – | – |
合同会社の場合も、株式会社と同様に「電子定款」を利用すれば収入印紙代の40,000円が不要となり、法定費用は登録免許税の60,000円のみに抑えることができます。
これにより、設立費用を大幅に削減できるため、スモールスタートを目指す起業家にとって非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
法定費用以外の費用(印鑑作成費用や専門家への手数料など)は、株式会社の場合とほぼ同額と考えておくとよいでしょう。
どちらの会社形態を選ぶにせよ、資本金とは別に、設立費用として最低でも10万円~25万円程度の現金を用意しておく必要があると覚えておきましょう。
まとめ
法律上、会社設立は資本金1円から可能ですが、安易に少額で設定するのは危険です。
資本金は会社の体力であり社会的信用の指標となるため、金額が少なすぎると融資や取引で不利になる可能性があります。
設立後3ヶ月から6ヶ月の運転資金を目安に、許認可要件や対外的な信用度を考慮して金額を決定しましょう。
特に資本金を1000万円未満に設定すれば、消費税が最大2年間免除される節税メリットは非常に大きいです。
本記事で解説したポイントを参考に、ご自身の事業計画に合った適切な資本金を設定してください。
