実家での法人登記はアリ?賃貸や持ち家で違う注意点と家族への伝え方

起業にあたり、コストを抑えるため「実家で法人登記できないか?」とお考えではありませんか。

結論から言うと、実家での法人登記は条件を満たせば可能です。ただし、実家が賃貸か持ち家かによって確認すべき点が異なり、住宅ローン契約やプライバシーの問題など、思わぬ落とし穴も存在します。

この記事では、法人登記の可否を判断する具体的なチェックポイントから、メリット・デメリット、家族への伝え方、登記手続きの流れ、そして代替案となるバーチャルオフィスまでを網羅的に解説。

安心して事業をスタートさせるために、まずは正しい知識を身につけましょう。

ステップ1 実家で法人登記ができるか確認しよう

起業の第一歩として法人を設立する際、オフィスコストを抑えるために「実家を本店所在地にできないか?」と考える方は少なくありません。

慣れ親しんだ場所で事業を始められるのは魅力的ですが、いくつか事前に確認すべき重要なポイントがあります。

このステップでは、実家で法人登記が可能かどうかを判断するための具体的な確認事項を、物件の状況別に詳しく解説します。

結論からお伝えすると、法律上、実家の住所を本店所在地として法人登記を申請すること自体は可能です。

日本の会社法では、本店所在地の建物が自己所有であるか賃貸であるか、居住用か事業用かといった区別を設けていないため、手続き上は問題なく受理されます。

しかし、これはあくまで「登記手続きができる」という話です。実際に事業を運営していく上では、その実家が「賃貸」なのか「持ち家」なのかによって、クリアすべき条件が全く異なります。

これらの条件を確認せずに登記してしまうと、後から家族や大家さん、金融機関との間で深刻なトラブルに発展しかねません。

まずはご自身の実家の状況を把握し、潜んでいるリスクを正しく理解することから始めましょう。

実家が「賃貸」か「持ち家(住宅ローン返済中)」かによって、確認すべき点や注意点が異なります。

以下の表でポイントを整理しました。

物件の状況確認すべき書類相談・許可を得る相手主なリスク
賃貸物件の場合賃貸借契約書大家さん・管理会社契約違反による退去勧告、損害賠償請求
持ち家(住宅ローンあり)の場合住宅ローン契約書(金銭消費貸借契約書)融資を受けている金融機関契約違反によるローン一括返済請求、住宅ローン控除の適用外

ご両親が住む実家が賃貸マンションやアパートの場合、法人登記のハードルは高くなります。

建物の所有者はあくまで大家さんであり、ご両親は「居住する権利」を借りているに過ぎません。
そのため、独断で事業利用や法人登記を進めることは絶対に避けなければなりません。

賃貸借契約書で事務所利用が禁止されていないかチェック

最初にすべきことは、ご両親が交わした「賃貸借契約書」の内容を隅々まで確認することです。

特に「建物の使用目的」や「禁止事項」に関する条項を注意深く読んでください。

多くの居住用物件の契約書には、以下のような文言が記載されています。

  • 「本物件は居住のみを目的とし、その他の用途(事務所・店舗等)に使用してはならない。」
  • 「不特定多数の者の出入りが想定される行為を禁ずる。」

このような事務所利用を明確に禁止する条項がある場合、原則として法人登記はできません。

もし無断で登記した場合、契約違反とみなされ、最悪のケースでは賃貸借契約を解除され、退去を求められる可能性があります。

まずは契約書で「事務所利用」が許可されているか、あるいは禁止されていないかを確認することが大前提です。

トラブル回避のため大家さんへの事前相談と使用承諾書を

契約書に事務所利用を禁止する明確な記載がなかったとしても、安心はできません。

法人登記を検討しているなら、必ず事前に大家さん(または物件の管理会社)に相談し、許可を得る必要があります。

大家さんからすれば、法人登記されることで「会社の郵便物が大量に届くようになるのでは?」「来客が増えて他の住民とトラブルにならないか?」「看板を設置されたりしないか?」といった懸念を抱くのは自然なことです。

事業内容や来客の有無、郵便物の量などを具体的に説明し、居住環境に影響を与えないことを真摯に伝えて理解を求めましょう。

そして、もし許可が得られた場合は、口約束で終わらせず、必ず「本店所在地としての登記および事業利用を承諾する」という内容の「使用承諾書」に署名・捺印してもらいましょう。
この書面は、法務局での登記申請時に提出を求められることがあるだけでなく、後々の「言った、言わない」という水掛け論を防ぐための重要な証拠となります。

実家が持ち家であれば、大家さんのような第三者の許可は不要なため、問題なく法人登記できると考えがちです。
しかし、その家を購入する際に「住宅ローン」を利用している場合は、大きな注意点が存在します。

事業用利用が契約違反にならないか確認

住宅ローンは、契約者本人やその家族が住むための「居住用不動産」を取得することを目的とした、非常に低い金利が適用される特別なローンです。
そのため、多くの金融機関では、住宅ローンの契約書(金銭消費貸借契約書)において、融資対象の物件を「事業目的で利用すること」を制限または禁止しています。

自宅の一部を事務所として法人登記することも、この「事業目的での利用」に該当する可能性があります。
もし契約に違反していると金融機関に判断された場合、規約に基づき、融資金の一括返済を求められるという極めて深刻な事態に陥るリスクがあります。
まずはご両親に住宅ローン契約書を確認してもらい、事業利用に関する条項をチェックしましょう。
判断に迷う場合は、必ず融資を受けている金融機関の窓口に相談してください。

住宅ローン控除の適用外になるリスクを理解する

もう一つの重大なリスクが、税金に関する「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」です。
これは、年末のローン残高に応じて、所得税や住民税が大幅に軽減される制度で、利用している家庭にとっては非常に大きなメリットがあります。

しかし、この控除を受けるためには「自己の居住の用に供していること」が絶対条件です。
法人登記をして自宅を事務所として利用する場合、その事業利用の割合によっては、この条件を満たさなくなる可能性があります。

具体的には、家の床面積の2分の1以上を事業専用で使っている場合、住宅ローン控除は一切受けられなくなります。
また、事業利用の割合がそれ以下であっても、居住用部分の割合に応じて控除額が減額される可能性があります。
ご両親が長年受けてきた税金の優遇措置が、あなたの法人登記によって失われてしまうかもしれないのです。
この金銭的なデメリットについても、事前にしっかりと理解し、家族に説明しておく必要があります。

ステップ2 実家で法人登記するメリットとデメリットを比較検討する

実家での法人登記は、手軽に始められる魅力的な選択肢ですが、見落としがちなデメリットも存在します。

起業の第一歩で後悔しないためには、メリットとデメリットの両方を正しく理解し、ご自身の事業計画やライフプランと照らし合わせて冷静に判断することが不可欠です。

ここでは、具体的なメリット・デメリットを多角的に比較検討していきましょう。

起業初期における最大の課題は、運転資金の確保と煩雑な手続きです。

実家を本店所在地にすることで、これらの課題を大幅に軽減できる可能性があります。

オフィス賃料や通勤コストがかからない

最大のメリットは、何と言っても事業運営にかかる固定費を劇的に圧縮できる点です。
新たにオフィスを借りる場合、都心部では数十万円から百万円以上の初期費用(保証金、礼金、仲介手数料など)に加え、毎月の賃料や共益費が発生します。
実家をオフィスとすれば、これらの費用が一切かかりません。

具体的には、以下のようなコスト削減効果が期待できます。

削減できるコストの種類詳細
事務所の初期費用・賃料保証金、礼金、敷金、仲介手数料、前家賃などが不要になります。毎月の賃料負担がなくなるため、資金繰りに大きな余裕が生まれます。
光熱費・通信費事業専用で回線を引いたり、電気・ガスを契約したりする必要がありません。家族と按分するルールを決める必要はありますが、トータルコストは抑えられます。
通勤時間・交通費毎日の通勤時間と交通費がゼロになります。削減できた時間を事業活動や自己投資に充てることができ、生産性が向上します。満員電車などのストレスからも解放されます。
オフィス家具・備品代すでにある家具や備品を活用できるため、デスクや椅子、棚などの購入費用を最小限に抑えられます。

本店所在地の変更リスクが低い

事業を長く続けていく上で、本店の「住所」は非常に重要な要素です。
賃貸オフィスの場合、契約更新のタイミングで賃料が上がったり、ビルの建て替えで移転を余儀なくされたりする可能性があります。

本店所在地を変更するには、法務局で変更登記手続きが必要となり、登録免許税(管轄内移転なら3万円、管轄外移転なら6万円)がかかります。
それだけでなく、税務署や都道府県税事務所、年金事務所などへの届出、ウェブサイトや名刺、会社案内パンフレットの修正、全取引先への通知など、膨大な手間と時間、そして追加コストが発生します。

その点、持ち家である実家は所有者が親族であるため、立ち退きなどのリスクが極めて低く、安定した事業基盤を築くことができます。
将来的に事業が拡大し、別の場所にオフィスを構えたとしても、登記上の本店は実家のままにしておく、という選択も可能です。

コスト面のメリットは絶大ですが、その裏返しとしてプライバシーの喪失や社会的な信用に関わるデメリットが存在します。

これらを軽視すると、事業運営だけでなく家族の生活にも影響を及ぼす可能性があるため、慎重な検討が必要です。

自宅住所が誰でも閲覧可能になる

法人登記における最も注意すべきデメリットが、このプライバシーの問題です。

法人を設立すると、本店所在地として登記した実家の住所が公の情報として一般に公開されます。

具体的には、以下の方法で誰でもあなたの会社の住所を知ることができてしまいます。

  • 登記事項証明書(登記簿謄本)の取得:法務局で手数料を支払えば、誰でも取得可能です。会社の基本情報として本店所在地が明記されています。
  • 国税庁「法人番号公表サイト」での検索:法人設立後に付与される法人番号をもとに、国税庁のウェブサイトで検索すると、商号(会社名)とともに本店所在地が無料で表示されます。

住所が公開されることで、次のようなリスクが想定されます。

  • 面識のない営業担当者や勧誘員が突然訪問してくる。
  • 事業に関係のないダイレクトメールが大量に届き、家族用の郵便物と混在する。
  • 万が一、顧客とトラブルになった際に、相手が自宅に押しかけてくる。
  • ストーカーや嫌がらせの標的になる可能性もゼロではない。

これらのリスクは、起業家本人だけでなく、同居する家族全員に及ぶ可能性があります。

特に女性起業家の方や、小さなお子様がいるご家庭では、最も慎重に判断すべきポイントです。

取引先や金融機関からの見え方を意識する

事業を運営していく上で、「信用」は最も重要な資産の一つです。
残念ながら、ビジネスの世界では「事務所の住所」が信用の指標の一つとして見られる側面も否定できません。
例えば、以下のような場面で「自宅兼事務所」であることが不利に働く可能性があります。

  • BtoB(法人向け)取引:高額な契約や長期的な取引を検討している企業の中には、相手の事業基盤の安定性を確認するため、オフィスビルの住所であるかどうかを気にする場合があります。「自宅住所の会社」というだけで、事業規模が小さい、あるいは信頼性に欠けると判断されてしまう可能性があります。
  • 金融機関からの融資:創業融資ではそれほど問題にならなくても、事業拡大のための追加融資を申し込む際、事業とプライベートの区別が曖昧だと判断され、審査に影響することがあります。しっかりした事業計画はもちろんですが、オフィスを構えていることが事業の「本気度」を示す一因と見なされることもあります。
  • 許認可が必要な業種:古物商、人材派遣業、建設業など、一部の許認可が必要な業種では、事業用の独立したスペースが確保されていることが許可の要件となっている場合があります。生活空間と事務所が混在している実家では、この要件を満たせず、許認可が下りないケースもあるため、事前に管轄の行政機関への確認が必須です。

もちろん、IT系のサービスやコンサルティングなど、事業内容によってはオフィスの場所が全く問われないことも多くあります。
ご自身の事業が、取引先や顧客からどのように見られるかを客観的に分析することが重要です。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

ステップ3 家族の理解を得るための伝え方

実家での法人登記は、法的な手続きだけでなく、同居する家族の理解と協力が不可欠です。

これまで通りの生活が少し変わる可能性があるため、事前に丁寧な説明を尽くし、応援してもらえる関係を築くことが成功の鍵となります。

ここでは、家族に納得してもらうための具体的な伝え方のステップを解説します。

起業への夢や希望を語る前に、まずは法人登記によって家族の生活にどのような影響が考えられるのか、メリットだけでなくデメリットやリスクも正直に伝えることが信頼を得るための第一歩です。

不安にさせることを恐れず、事実を誠実に伝え、その対策もセットで示すことで、あなたの真剣さが伝わります。

郵便物が届くことや来客の可能性

まず、具体的な生活の変化として、郵便物と来客について説明しましょう。

法人を設立すると、法務局、税務署、年金事務所といった公的機関から重要書類が届くようになります。
また、取引先からの契約書や請求書、金融機関からの案内など、会社宛ての郵便物が日常的に届くことになります。

これらの郵便物が家族の郵便物と混ざらないよう、専用のポストやレターケースを用意するなどの対策を伝え、家族が誤って開封してしまうといったトラブルを防ぎましょう。

来客については、「原則として事務所への来客はない」という基本方針を明確に伝えることが重要です。

打ち合わせは外部のカフェやコワーキングスペースを利用することを伝え、プライベートな空間が守られることを約束しましょう。

ただし、税務調査など、どうしても自宅に来訪がある可能性もゼロではありません。
その際は必ず事前に連絡し、家族の都合を最優先することを伝え、不安を取り除きましょう。

住所公開によるプライバシーのリスク

家族が最も懸念するのが、プライバシーの問題です。
この点は特に丁寧に説明する必要があります。

法人登記をすると、会社の本店所在地として実家の住所が登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されます。
この情報は法務局で誰でも取得できるほか、国税庁の法人番号公表サイトでも公開されます。
つまり、実家の住所がインターネット上で誰でも閲覧可能な状態になるという事実を隠さずに伝えなければなりません。

これにより、営業目的のダイレクトメールや電話が増える可能性があります。
また、万が一のケースとして、見知らぬ人物が訪ねてくるリスクもゼロではないことを説明し、その上で、どのような対策を講じるのかを具体的に示しましょう。

例えば、「Webサイトには詳細な地図を掲載しない」「問い合わせはメールフォームに限定する」「固定電話はIP電話サービスを利用し、個人の電話番号は使わない」といった対策を伝えることで、リスクを最小限に抑える姿勢を見せることが大切です。

説明すべき項目家族が抱く可能性のある懸念伝えるべき対策・対応
郵便物・知らない会社から郵便物がたくさん届く
・重要な書類を間違って捨ててしまいそう
・私的な郵便物と混ざって面倒
・会社宛の郵便物は専用のポストやトレイで管理する
・公的機関や取引先から届く書類の種類を説明する
・家族に開封や処理をお願いすることはないと約束する
来客・知らない人が家に出入りするのは不安
・プライベートな時間や空間がなくなる
・急な来客で対応に困る
・打ち合わせは原則外部で行い、来客はないと明確に伝える
・万が一の来訪(税務調査など)は必ず事前に相談する
・家族の生活空間には立ち入らせないことを約束する
住所の公開・自宅の住所がネットで公開されるのが怖い
・セールスや勧誘が増えそう
・犯罪などに巻き込まれないか心配
・住所が公開される事実と、その範囲を正直に伝える
・Webサイトに詳細な地図を載せない等の対策を説明する
・将来的に事業が軌道に乗ったらオフィスを借りる計画を話す
光熱費・家賃・事業で使う電気代や通信費で家計が圧迫される
・家賃も払わずに事業をするのは不公平
・事業で使用する分の光熱費や通信費は自分で負担することを提案する
・家事按分という経費計上の仕組みを説明する
・相応の金額を家賃として家に入れることを約束する

リスクやデメリットを正直に伝えた上で、なぜ自分がこの事業を始めたいのか、その熱意を誠心誠意語りましょう。

家族はあなたのことを一番心配しているからこそ、不安を感じています。
その不安を払拭できるのは、あなたの本気度と未来への具体的なビジョンです。

「なぜ、今、この事業なのか」「この事業を通して社会や人々にどう貢献したいのか」といった想いを自分の言葉で伝えてください。

可能であれば、簡単な事業計画書や収支計画を見せながら説明すると、単なる思いつきではなく、熟慮の末の決断であることが伝わり、説得力が増します。

そして、「なぜ実家で登記したいのか」という理由も明確にしましょう。

「初期費用を抑えて、その分を事業の成長資金に充てたい」「事業が軌道に乗るまでの数年間だけ協力してほしい」「将来的には必ずオフィスを借りて独立し、家族に恩返しがしたい」など、具体的な計画と感謝の気持ちを伝えることで、家族もあなたの夢を応援したいという気持ちになってくれるはずです。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

ステップ4 それでもダメなら代替案を検討

ご家族の理解が得られなかったり、賃貸契約や住宅ローンの問題で実家での法人登記が難しい場合でも、諦める必要はありません。

創業者を支える便利なサービスが数多く存在します。

ここでは、実家の代わりに本店所在地として利用できる代表的な3つの選択肢を、それぞれの特徴とともに詳しく解説します。

「自宅の住所を公開したくない」「でも、オフィスを借りるほどのコストはかけられない」という方に最適なのがバーチャルオフィスです。
これは、物理的な作業スペースを借りるのではなく、事業用の住所や電話番号だけをレンタルできるサービスです。

主なメリットは、月額数千円からという圧倒的な低コストで、都心一等地などの住所を本店所在地として登記できる点にあります。
これにより、自宅のプライバシーを完全に守りながら、企業のウェブサイトや名刺に信頼性の高い住所を記載できます。

届いた郵便物を指定の住所へ転送してくれるサービスも基本プランに含まれていることがほとんどです。

一方で、デメリットも理解しておく必要があります。

バーチャルオフィスはあくまで住所貸しサービスのため、実際の作業スペースはありません。
また、許認可が必要な一部の業種(建設業、士業、古物商、人材派遣業など)では、事業所としての実体がないため利用できない場合があります。

さらに、金融機関によっては法人銀行口座の開設審査が厳しくなる可能性もゼロではありません。
とはいえ、近年はスタートアップの利用も増え、社会的な認知度も向上しています。

【こんな人におすすめ】

  • コストを最小限に抑えて起業したい方
  • 主に在宅やカフェなどで仕事をするノマドワーカーの方
  • 自宅住所の公開に強い抵抗がある方
  • ECサイト運営など、物理的な店舗やオフィスが不要な事業を行う方

取引先や金融機関からの信用度をより重視し、かつ作業に集中できる環境も確保したい場合には、レンタルオフィスが有力な選択肢となります。

レンタルオフィスは、デスクや椅子、インターネット環境などが完備された専用の個室を借りられるサービスです。

最大のメリットは、物理的なオフィスを構えるため社会的信用度が高く、法人登記はもちろん、各種許認可の取得にも対応しやすい点です。

受付スタッフが常駐していたり、会議室や複合機などの共用設備が充実していたりする施設も多く、スタートアップでも整ったビジネス環境をすぐに手に入れられます。

自宅と職場を完全に切り分けられるため、仕事のオン・オフを明確にしたい方にも向いています。

デメリットは、バーチャルオフィスに比べてコストが高くなる点です。

都心部では月額数万円から十数万円程度の費用がかかります。
しかし、自分でオフィスを借りて内装工事や備品の購入、インフラ整備を行う手間と初期費用を考えれば、結果的にコストパフォーマンスは高いと言えるでしょう。

【こんな人におすすめ】

  • クライアントとの打ち合わせや来客が多い方
  • 近い将来、従業員を雇用する計画がある方
  • 事業用の許認可取得が必要な方
  • 自宅では仕事に集中できない、公私の区別をつけたい方

レンタルオフィスと似た選択肢として、シェアオフィスやコワーキングスペースも検討の価値があります。
これらは、個室ではなくオープンスペースの座席を他の利用者と共有して利用する形態のワークスペースです。

法人登記に対応したプランを提供している施設も多く、レンタルオフィスよりも比較的安価に作業場所と登記用の住所を確保できる

ただし、オープンスペースが基本のため、電話の内容が周囲に聞こえてしまったり、機密情報の取り扱いに注意が必要だったりといった側面もあります。

法人登記が可能かどうかは施設やプランによって異なるため、契約前に必ず確認が必要です。

【こんな人におすすめ】

  • 固定費を抑えつつ、快適な作業環境が欲しい方
  • 異業種の起業家やフリーランスとの交流を求めている方
  • 一人での作業に孤独を感じやすい方

各代替案の比較まとめ

ここまで紹介した3つの代替案について、それぞれの特徴を一覧表にまとめました。
ご自身の事業内容や予算、何を重視するかに合わせて、最適な選択肢を見つけてください。

項目バーチャルオフィスレンタルオフィスシェアオフィス/コワーキングスペース
月額費用(目安)安い(数千円~)高い(数万円~)比較的安い(1万円~)
プライバシー保護◎(自宅住所を完全に隠せる)◎(自宅と完全に分離)◎(自宅と完全に分離)
社会的信用度△(業種や取引先による)◎(物理的なオフィスで高い)○(実体があるため比較的高め)
作業スペースなしあり(専用個室)あり(共用スペース)
許認可取得×(原則不可な業種が多い)◎(ほとんどの業種で可能)○(施設によるが可能な場合が多い)
銀行口座開設△(審査が厳しくなる可能性)◎(有利)○(比較的スムーズ)

このように、実家での登記が難しい場合でも、事業のステージやスタイルに合わせて様々な選択肢があります。

それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身のビジネスにとって最善のスタートを切りましょう。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

ステップ5 実家で法人登記する手続きの進め方

実家での法人登記を決意したら、いよいよ会社設立の手続きに入ります。

手続きは大きく分けて「定款の作成」と「法務局への登記申請」の2つのステップで進みます。

専門家に依頼することもできますが、費用を抑えたい場合は自分で行うことも十分可能です。

ここでは、株式会社を設立する場合を例に、具体的な手順と注意点を詳しく解説します。

会社設立の第一歩は、会社のルールブックである「定款(ていかん)」を作成することです。

定款には、会社の商号(社名)、事業目的、本店所在地などを記載します。

特に本店所在地の記載方法には注意が必要です。

登記申請の際には、実家の住所を番地まで正確に記載する必要がありますが、定款に記載する本店所在地は、将来の移転コストを考慮して「最小行政区画」まで(例:「東京都新宿区」)にしておくのがおすすめです。
こうすることで、同じ市区町村内で引っ越す場合には、定款変更の手続きが不要になり、手間と費用を節約できます。

定款が完成したら、株式会社の場合は公証役場で「定款認証」という手続きを受ける必要があります。
この際、紙の定款では4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款で認証を受ければ不要になります。

合同会社の場合は定款認証自体が不要です。

定款認証が終わったら、次は資本金を準備し、法務局へ登記申請を行います。

登記申請が受理され、登記が完了した日が「会社設立日」となります。

1. 資本金の払込み

まず、発起人(会社を設立する人)個人の銀行口座に、定款で定めた資本金を振り込みます。
このとき、通帳のコピーが資本金を払い込んだ証明になるため、必ず記録が残るように振り込む必要があります。
具体的には、通帳の「表紙」「支店名や口座番号が記載されたページ」「振込記録が記帳されたページ」の3点のコピーが必要になります。
一時的に資金を借りてきて払い込み、すぐに引き出すような「見せ金」は法律で禁止されているため、絶対に行わないでください。

2. 登記申請書類の作成

次に、法務局に提出する登記申請書類を準備します。
必要な書類は会社の形態(株式会社か合同会社か)によって異なりますが、一般的に以下のものが必要となります。
漏れがないように、法務局のウェブサイトで最新の情報を確認しながら準備しましょう。

書類名概要と注意点
登記申請書法務局のウェブサイトにある雛形を利用して作成します。会社の基本情報を記載する最も重要な書類です。
登録免許税納付用台紙登録免許税分の収入印紙を貼り付ける台紙です。収入印紙は郵便局や法務局内の印紙売り場で購入できます。
定款公証役場で認証を受けた定款の謄本を提出します。
発起人の決定書(本店所在地決定書)定款で本店所在地を最小行政区画までしか定めていない場合に、具体的な地番までの住所を決定したことを証明する書類です。
役員の就任承諾書取締役などの役員が就任を承諾したことを証明する書類です。実印を押印します。
印鑑証明書取締役全員の印鑑証明書が必要です。発行から3ヶ月以内のものを準備します。
資本金の払込証明書資本金の振込記録がある通帳のコピーと、会社代表者が作成した払込証明書を綴じたものです。
印鑑届書会社の実印(代表者印)を法務局に登録するための書類です。今後の重要手続きで必要になります。

3. 法務局への申請と登録免許税

すべての書類が揃ったら、実家の住所を管轄する法務局へ登記申請を行います。
申請方法は「窓口持参」「郵送」「オンライン(G-BizIDを利用)」の3つから選べます。

申請時には登録免許税を納付する必要があります。
登録免許税は、株式会社の場合は最低15万円(資本金の0.7%)、合同会社の場合は最低6万円(資本金の0.7%)となっており、設立費用の中でも大きな割合を占めます。

申請後、書類に不備がなければ、約1週間から10日ほどで登記が完了します。
登記が完了したら、法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」と「印鑑カード」を取得しましょう。
これらは、銀行口座の開設や各種契約手続きに必須の書類となります。

まとめ

実家での法人登記は、コストを抑えられる一方で、事前の確認が不可欠です。

賃貸の場合は大家さんの承諾、持ち家の場合は住宅ローン契約の確認が必須となります。

登記した住所は誰でも閲覧可能になるため、プライバシーのリスクや対外的な信用面も考慮しましょう。

最も重要なのは、同居する家族への丁寧な説明と理解です。

もし懸念が残るなら、バーチャルオフィスなどの代替案も有効です。

メリット・デメリットを総合的に判断し、ご自身の事業に最適な選択をしてください。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順
実家での法人登記はアリ?賃貸や持ち家で違う注意点と家族への伝え方
最新情報をチェックしよう!