売上1000万円超えそうな瞬間にやるべきこと|税理士が教えるポイント

売上が1,000万円に近づいたら、消費税やインボイス制度、顧客対応、税務署への届出など重要なポイントが増えます。

本記事では、課税事業者となるタイミングや税務対策、キャッシュフローの注意点など、税理士が実務で押さえるべき対策をわかりやすく解説します。

売上1000万円を超えそうなタイミングとは

売上1000万円を超えそうなタイミングは、事業を個人で営む方やフリーランス、小規模法人にとって大きな節目です。このラインは消費税の課税・免税の分岐点でもあり、経理や納税に大きな影響を及ぼします。
特に「前年の売上」「取引増加」「新規プロジェクトの受注」など、売上拡大の傾向が見える時は注意が必要です。

ここでは、どのような状況でこの節目が訪れるか、詳細に解説します。

売上が1000万円に近づく事業には、以下のような特徴が見られます。

具体的にどのような状態で注意すべきか、把握することが重要です。

業種・ビジネスモデル特徴売上成長の契機
飲食・小売などリアル店舗型来客数や店舗数の増加、価格改定新店舗オープン、繁忙期の売上増
ECサイト、ネットショップ新商品投入、広告拡大による集客増ヒット商品の出現、メディア掲載
個人事業・フリーランス法人クライアントとの継続案件増加大型契約、新規分野参入
専門サービス業(コンサル等)高単価案件の獲得、紹介増講演・セミナー、パートナー提携

事業の規模拡大や販路拡大が見込まれている場合、意識して売上の集計や見込み管理を行う必要があります。

1000万円という売上額は、税務や経営の観点で重要な数値です。

課税・免税の判断や各種制度の切り替えなど、多くの基準点で活用されています。

基準となる売上額主な制度判定タイミング
1000万円(基準期間の課税売上高)消費税の課税事業者判定2年前の売上(基準期間)を参照
1000万円(直前1年の売上)特定期間(直前6か月など)の再判定特定期間をもとに年度中に切り替え

売上1000万円の判定対象となる期間や範囲は制度によって異なります。

例えば消費税課税事業者の判定では「基準期間」が個人事業主なら2年前、法人は前々事業年度となりますので、事前のシミュレーションが特に重要です。

売上1000万円に達しそうなときは、税理士や専門家へ早めに相談し、今後の事業計画や税務手続きについて検討することが不可欠です。

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消費税の課税事業者になるかどうかの分岐点

売上高1,000万円が消費税の課税・免税を分けるボーダーラインです。

日本国内の事業者は、原則として2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えると、その2年後の課税期間から消費税の課税事業者となります。

たとえば、2022年の売上が1,000万円を超えていれば、2024年から消費税を納める義務が発生します。

また、「特定期間課税売上高」や「給与等支払額」にも注意が必要です。

前年の前半6ヶ月間(特定期間)で1,000万円を超える場合も、次の年から課税事業者となることがあります。
これにより、急激な売上増加時などは早期に消費税の納税義務が発生するケースもあるため、売上管理は細かく行いましょう。

基準となる期間売上額の条件課税事業者となる時期
基準期間(2年前)課税売上高 1,000万円超2年後から
特定期間(前年の前半6ヶ月)課税売上高または給与等支払額 1,000万円超翌年から

消費税の納税義務が実際に発生するタイミングは、「基準期間」の売上により決定します。

個人事業主の場合は2年前の事業年度、法人の場合は前々事業年度の課税売上高が用いられます。
また、「特定期間判定」も適用されるため、事業拡大時や新規取引が増えた際はしっかりと確認しておきましょう。

免税事業者から課税事業者へ移行する場合、次のようなステップが必要です。

  • 売上の集計と適用判定
  • 課税事業者となる年度の確認
  • 必要に応じて「課税事業者選択届出書」などの提出

また、「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が2023年10月から本格運用されたため、課税事業者かどうかは取引先との関係でも影響が大きくなりました。

今までは免税事業者だったが、取引先からインボイス発行を求められることで課税事業者の選択を迫られた、というケースも増えています。

事前にしっかりと事業計画と課税事業者移行の有無を確認しておくことをおすすめします。

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売上1000万円を超えた場合の税務上の注意点

売上1000万円を超えると、税務署による税務調査や書類確認のリスクが高まるため、正確な記帳と帳簿保存が不可欠です。

国税庁が定める「所得税法」や「消費税法」に基づき、帳簿類や領収書を7年間保存する必要があります。

売上台帳や仕入帳だけでなく、現金出納帳や経費出納帳も詳細に記載しましょう。

また、会計ソフト(例:弥生会計、freee、マネーフォワード)を利用すると、日々の記帳作業を効率化でき、帳簿のミスや漏れを防ぐ助けになります。

帳簿作成にあたっては、入力日付・取引内容・金額・取引先名を必ず記載し、裏付けとなる証憑書類と合わせて保存します。

売上1000万円超で事業規模が拡大すると、領収書や請求書の取引件数も増加します。
これらの書類は、消費税や法人税、所得税の計算根拠となるため、紛失や破棄に十分注意しましょう。

領収書・請求書管理のポイントは以下の通りです。

管理対象保存方法保存期間
領収書日付・内容ごとにファイリング、またはスキャンして電子保存7年間
請求書発行順・取引先ごとに整理、電子帳簿保存法対応も推奨7年間
契約書等関連取引ごとにクリアファイル保存原則7年間

電子帳簿保存法によって、電子保存も認められているため、会計システムやクラウドサービスの利用も今後の管理効率化に有効です。

2023年10月から導入されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、消費税の仕入税額控除を受けるためには「適格請求書発行事業者」として登録し、インボイスの発行・保存が必要となりました。

すでに売上1000万円を超え、課税事業者となる場合は、取引先からインボイス対応を求められるケースが増えます。

インボイス適用のポイントを以下にまとめます。

対応事項具体的な内容注意点
適格請求書発行事業者の登録「適格請求書発行事業者登録申請書」を税務署に提出し、登録番号の取得登録がなければインボイス発行不可
インボイス様式の確認登録番号、取引内容、消費税額等を記載した請求書を発行要件不備は仕入税額控除の対象外
インボイスの保存発行・受領したインボイスを7年間保管電子保存も可。紛失防止策を徹底

課税事業者として継続取引が可能か否かは、インボイス制度対応の有無で大きく変化するため、今後の取引先管理や売上拡大に必須となります。

インボイス制度未対応の場合、下請業者としての選定から外れる可能性もあるので注意しましょう。

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税務署や公的機関への届出の必要性

売上が1,000万円を超えそうなタイミングで最も重要なのは、税務署や公的機関への適切な届け出です。
この届出を怠ると、後に大きなペナルティや不利な税制適用となる場合があるため、事前にしっかりとした対応を行うことが求められます。

消費税の課税事業者となる場合には、各種申告や届出が必須です。

特に、前々年の課税売上高が1,000万円を超えた場合、翌々課税期間から自動的に消費税の課税事業者となります。

以下の表に、主な届出書類と提出先、提出タイミングをまとめます。

届出書類提出先提出タイミング
消費税課税事業者届出書所轄税務署課税事業者となる課税期間の開始の日まで
青色申告承認申請書所轄税務署青色申告を開始する年の3月15日まで
※新規開業の場合は開業から2ヶ月以内
給与支払事務所等の開設届出書所轄税務署給与支払開始日から1ヶ月以内
個人事業の開業・廃業等届出書所轄税務署開業・廃業等があった日から1ヶ月以内

特に「消費税課税事業者届出書」は、課税事業者になる際に必ず提出が必要です。
その他にも、事業形態や従業員の有無によって必要となる書類が異なるため、状況に応じた確認が大切です。

売上1,000万円を超える規模の事業者の場合、青色申告の導入が強く推奨されます。

青色申告と白色申告には、記帳方法や控除額、税務署への届出の有無といった点で大きな違いがあります。

申告区分特徴主なメリット届け出の有無
青色申告複式簿記による帳簿付けが必須青色申告特別控除(最高65万円)
家族への給与支払いを経費化可能
赤字の繰越しが最長3年可
必要(青色申告承認申請書)
白色申告原則、簡易な帳簿付けでOK手続きが比較的簡単不要(所轄税務署に届出不要)

売上拡大や節税対策を考えると、青色申告のメリットは非常に大きいため、早めの申請が効果的です。

長期的な事業運営を見据えて、適切な申告方法を選択しましょう。

なお、各種届出の期限を過ぎてしまうと翌期以降にしか反映できなかったり、税制上の優遇措置が受けられないケースもあります。

「いつ」「どの書類を」「どこに」提出すべきかを必ず確認し、正確な手続きを心がけてください。

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売上1000万円を超える際のキャッシュフロー対策

売上1000万円を超えるタイミングでは、消費税や預り金などの納税義務が増え、キャッシュフロー管理の重要性が格段に高まります。
特に消費税の納付による資金流出や、人件費・外注費・仕入れなど各種支払いが重なる場合、手元資金不足に陥るリスクも高くなります。
そのため早い段階で必要資金を試算し、資金を確保しておくことが不可欠です。

たとえば、納税スケジュールを逆算して、準備資金を月ごとに積み立てていく方法が効果的です。
また、売掛金の回収タイミングと仕入・外注費等の支払いタイミングを調整し、入金と出金のズレを見える化して管理しましょう。

主な支払項目発生タイミングキャッシュフロー対策
消費税・所得税等の税金年度末もしくは翌年3月頃毎月積立口座を設ける/試算表で予測金額を把握
仕入・外注費月末締め翌月払い等売掛金の回収サイト短縮/交渉による支払サイト調整
人件費月末/翌月初支給日直前の出金を避け入金とのバランスを意識

資金が不足しそうな場合は、早期に金融機関へ相談し、日本政策金融公庫や民間銀行などの短期融資や運転資金ローンの活用も検討しましょう。

キャッシュフローを安定させるためには、資金繰り表の作成・運用が不可欠です。 

資金繰り表とは、月ごとの現金収支(入金・出金の予測)を一覧化する表のことです。
これにより先々の資金余剰・不足を「見える化」し、計画的な経営判断や緊急時の対応がしやすくなります。

資金繰り表の作成では、以下のポイントを押さえましょう。

  • 売掛金・買掛金・各種支払いの発生・回収日を正確に記載する。
  • 消費税や各種税金の納付時期・金額を反映させておく。
  • 月次で現金残高を必ず把握し、赤字月を予測・早めに対処策を検討する。
  • クラウド会計ソフト(例えば「弥生会計」「マネーフォワードクラウド会計」など)の資金繰りレポート機能も積極的に活用する。

また、売上拡大とともに変動するコストや納税資金の動きを常に意識しましょう。

月次や四半期ごとに資金繰り表を見直し、必要なときにすぐ対応できる資金計画を立てることが大切です。

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税理士が教える売上1000万円突破時の経営改善アドバイス

売上1000万円の突破は、個人事業主や中小企業経営者にとって大きな成長の節目です。
このタイミングで、事業の課題や体制を見直し、さらなる安定経営を目指すことが重要です。

ここでは税理士の視点から、売上1000万円突破時に取り組むべき経営改善のポイントについて解説します。

売上が1000万円を超える規模になると、個人事業主で続けるか、法人(株式会社・合同会社)へと移行するかの判断が重要なテーマとなります。

法人化には以下のようなメリット・デメリットがあります。

項目個人事業主法人
所得税・法人税所得の増加に伴い所得税率が高くなる利益に対して一定の法人税率
社会保険任意加入原則として加入義務あり
信用力低め高まる(取引先・金融機関の印象良化)
経理・決算比較的簡易複雑・決算報告が必要
役員報酬・経費計上使い分け不可給与と経費の分離が可能

従業員の雇用や取引先の拡大予定がある場合、法人化による節税・社会的信用力のアップなど、多角的な観点から検討しましょう。

税理士に相談し、自社に合ったタイミングを見極めることが得策です。

売上1000万円を越えると、単に売上高を追うだけでなく利益の最大化が重要になります。
そこで次のようなポイントを意識しましょう。

ポイント具体策
利益率の向上高粗利な商品・サービスへの注力、単価アップの施策実施
コスト削減仕入れ先の見直し、業務の無駄削減、利用サービスの最適化
経費管理の強化帳簿付けの徹底、経費精算フローの明確化
資金繰りの可視化資金繰り表導入、定期的な財務状況のチェック

税理士のサポートを受けることで、経費精算や資金計画の最適化が期待できるため、積極的な活用をおすすめします。
また、会計ソフトの導入やクラウドサービスの活用も、業務効率化やコスト削減に大きく寄与します。

売上1000万円を超えそうなタイミングこそ、経営の視座を一段上げて「事業の永続発展」に向けた仕組み作りを始めましょう。

組織体制・利益・現金管理・経費の最適化など、多角的な経営改善が長期的な成長を実現します

税理士の専門知識をフル活用し、今後のビジョン実現を加速させましょう。

まとめ

売上1000万円を超えるタイミングは、消費税の課税事業者への転換点や経理体制の見直しを迫られる重要な節目です。

正確な帳簿管理やインボイス制度への対応、必要な届出の提出、キャッシュフローの管理は必須です。

税理士の助言を活用し、必要に応じて法人化や利益率の改善も検討しましょう。

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