「1円で株式会社を設立したい」とお考えですか?
本記事では、会社法改正後に可能となった1円株式会社の設立方法から、メリット・デメリットまで徹底解説します。
少ない資本金でも法人格を得られる1円株式会社は、起業の障壁を下げる一方で、信用面や融資面での課題も存在します。
具体的な設立手順、必要書類、かかる費用の内訳を詳しく紹介するとともに、設立後の運営ポイントや実際の成功事例も網羅。
「本当に1円だけで会社は作れるのか」「個人事業主と比べてどうなのか」といった疑問にもお答えします。
これから起業を考えている方、個人事業主から法人成りを検討している方必見の情報です。1円株式会社設立の全てがこの記事で分かります。
1円株式会社とは何か
1円株式会社とは、資本金1円から設立できる株式会社のことを指します。
2006年5月の会社法施行により、それまで株式会社の設立に必要だった最低資本金制度(1,000万円)が撤廃され、わずか1円からでも株式会社を設立できるようになりました。
この制度変更により、起業のハードルが大幅に下がり、アイデアや技術はあるものの資金が少ない起業家でも株式会社を設立できるようになりました。
実際に、設立時の資本金が10万円以下の会社は全体の約30%を占めるようになっています。
従来の株式会社との違い
従来の株式会社と1円株式会社の最大の違いは、設立時に必要な資本金の額です。
会社法改正前は、株式会社を設立するためには最低1,000万円の資本金が必要でした。
これに対し、現在は1円でも株式会社を設立することが可能になっています。
ただし、資本金以外の法的な権利や義務、会社運営の基本的な仕組みについては、資本金の額によらず同じです。
取締役の選任、株主総会の開催、決算書類の作成など、会社法で定められた義務はすべて履行する必要があります。
項目 | 従来の株式会社 | 1円株式会社 |
---|---|---|
最低資本金 | 1,000万円 | 1円 |
法人格 | あり | あり |
株主の有限責任 | あり | あり |
会社法上の義務 | すべて適用 | すべて適用 |
1円株式会社が誕生した背景
1円株式会社制度が誕生した背景には、日本経済の活性化を図るための規制緩和政策があります。
バブル崩壊後の長期不況から脱却するため、政府は新規ビジネスの創出を促進する環境整備に取り組んでいました。
特に、IT革命の進展により、必ずしも多額の初期投資を必要としないビジネスモデルが増加。
実際の事業内容に見合った資本金で会社を設立できるようにすることで、起業家精神を持つ個人の挑戦を後押しする意図がありました。
また、諸外国との比較においても、アメリカやイギリスなど多くの先進国では最低資本金規制が存在しないか、非常に低い金額に設定されていたことも影響しています。
グローバル競争の中で日本の起業環境を整備する必要性が認識されていたのです。
会社法改正による最低資本金制度の撤廃
最低資本金制度が撤廃されたのは、2005年に成立し2006年5月に施行された新会社法によるものです。
それまでの商法では、株式会社の設立には最低1,000万円、有限会社の設立には最低300万円の資本金が必要でした。
この改正の目的は主に以下の3点でした:
- 起業促進による経済活性化
- 柔軟な会社運営の実現
- 国際的な企業環境の整備
会社法改正以前にも、2003年2月から「最低資本金規制特例制度」が導入され、一定の条件を満たす場合に資本金1円での株式会社設立が可能になっていました。
この特例制度の成果を踏まえ、完全撤廃に至ったという経緯があります。
なお、会社法改正では最低資本金制度の撤廃と同時に、有限会社制度も廃止されました。
現在では新たに有限会社を設立することはできませんが、改正前に設立された有限会社は「特例有限会社」として存続しています。
このような法改正により、起業家は事業内容や成長戦略に合わせて柔軟に資本金額を決定できるようになりました。
資金調達の手段としては、資本金以外にも借入や投資など様々な選択肢を組み合わせることが可能になり、起業の選択肢が大幅に広がったと言えるでしょう。
さらに、資本金が少額であっても株式会社という法人格を持つことで、個人事業主と比較して社会的信用を得やすくなるメリットもあります。
ただし、信用力という観点では資本金額も一定の影響を持つため、事業の成長に合わせて段階的に資本金を増やしていくことも検討すべきでしょう。
1円株式会社設立のメリット
会社法改正により登場した1円株式会社は、起業家にとって大きなチャンスをもたらしました。
従来の株式会社設立では最低1,000万円の資本金が必要でしたが、2006年5月の会社法施行後は実質的に1円から株式会社を設立できるようになりました。
ここでは、1円株式会社設立の主なメリットについて詳しく解説します。
少ない資金で起業できる
1円株式会社の最大のメリットは、文字通り「1円」という最小限の資本金で法人を設立できることです。
これにより、以下のようなメリットが生まれています。
起業のハードルが大幅に下がり、アイデアや技術を持っていても資金力がない若手起業家やフリーランスでも法人化が可能になりました。
開業資金を商品開発や設備投資、マーケティングなど、本業の成長に直結する分野に集中投下できます。
また、失敗時のリスクも最小限に抑えられるため、チャレンジ精神を持った起業家が増加しています。
特に初期費用を抑えたいWeb関連ビジネスやコンサルティング業などのサービス業で活用されています。
事業タイプ | 1円株式会社の活用メリット |
---|---|
IT・Webサービス | 初期投資を開発費用に集中できる |
コンサルティング | 個人の専門性を法人格で強化できる |
クリエイティブ業 | 機材・ソフトウェア投資に資金を回せる |
副業からの起業 | リスクを抑えながら法人化できる |
法人格を得ることによる信用力
個人事業主と比較して、株式会社という法人格を持つことは、ビジネスにおける大きな信用力につながります。
特に以下の点で優位性が生まれます。
取引先や顧客からの信頼性が向上します。大手企業との取引においては、法人格があることが取引条件になっているケースも多く、ビジネスチャンスが広がります。
また、採用面でも優秀な人材を集めやすくなり、「株式会社」という肩書きが営業や契約時の印象を良くします。
プライベートと事業の資産を明確に分けられることで、事業に関わるリスクから個人資産を守ることができます(有限責任)。
ただし、代表者が連帯保証人になるケースでは別です。
また、法人格を持つことで、各種イベントやセミナーへの参加、専門的なビジネスコミュニティへのアクセスなども容易になります。
初期投資を抑えながらも、法人としての社会的存在感を確立できる点は大きなメリットと言えるでしょう。
節税対策として活用できる
1円株式会社の設立は、効果的な節税対策となる可能性があります。
個人事業主から法人成りすることで、以下のような税務メリットが生まれます。
法人税は所得に応じた段階的な税率が適用されるため、年間所得が一定以上ある場合、個人事業主の所得税(最高45%)よりも税負担が軽減されることがあります。
特に、中小法人であれば年800万円以下の所得に対しては軽減税率(15%)が適用される場合もあります。
また、経費として計上できる範囲が個人事業主より広いため、税務上有利になることが多いです。
例えば、家族を役員や従業員として雇用し、給与を支払うことで、所得分散による節税が可能になります。
節税項目 | 個人事業主 | 1円株式会社 |
---|---|---|
税率 | 所得税(5%〜45%)+住民税 | 法人税(15%〜23.2%)+住民税+事業税 |
社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 健康保険・厚生年金(将来の年金額増加) |
経費計上 | やや制限的 | 幅広い経費計上が可能 |
所得分散 | 限定的 | 役員報酬や家族雇用による分散が可能 |
さらに、将来的に事業が拡大した際の相続税対策としても効果的です。
自社株の評価方法によっては、個人資産として持っているよりも税負担が軽減される可能性があります。
ただし、税制は頻繁に改正されるため、税理士などの専門家に相談しながら最適な選択をすることが重要です。
また、法人税のメリットは利益が出ている場合に限られるため、創業初期の赤字時期では必ずしもメリットにならないことに注意が必要です。
個人事業主からの法人成り
すでに個人事業主として活動している方が法人化する「法人成り」の選択肢としても、1円株式会社は最適です。
個人事業からスムーズに移行できる主なメリットは以下の通りです。
個人事業の成長に伴い、売上や利益が増加して所得税の負担が大きくなってきた場合、法人化することで税負担の最適化が可能になります。
また、事業規模の拡大に伴い、取引先からの信用や対外的なイメージが重要になってきた場合、法人化によって信頼性を高められます。
さらに、将来的な事業承継を見据えている場合、個人事業よりも株式会社の方が承継手続きがスムーズです。
株式の譲渡によって所有権の移転が明確になります。
法人成りのタイミングとしては、以下のような目安があります:
- 年間の売上が1,000万円を超えてきた場合
- 年間の所得が300万円を超えてきた場合
- 従業員を雇用する予定がある場合
- 大手企業との取引が増えてきた場合
- 事業拡大のための資金調達を検討している場合
法人成りの際は、個人事業で使用していた事業用資産の移行方法や、青色申告の承認申請、各種届出の変更など、手続き面での注意点もあります。
特に消費税の課税事業者となるタイミングには注意が必要です。
これらについては税理士や行政書士などの専門家に相談しながら進めると安心です。
1円株式会社であれば、法人成りの際の資本金の負担も最小限に抑えられるため、スムーズな移行が可能です。
ただし、実際の事業運営には運転資金が必要なため、実質的な資金計画は別途立てる必要があります。
1円株式会社設立のデメリット
会社法の改正により最低資本金制度が撤廃され、わずか1円でも株式会社を設立できるようになりましたが、メリットだけではなくデメリットも存在します。
起業を検討している方は、これらのデメリットをしっかりと理解した上で意思決定を行うことが重要です。
ここでは、1円株式会社設立に伴う主なデメリットを詳しく解説します。
資金力不足による経営リスク
1円株式会社の最大のデメリットは、資金力の脆弱性です。
会社を運営するには、オフィス賃料、従業員給与、在庫費用など、さまざまな運転資金が必要になります。
最低資本金が1円であるということは、その背景に十分な事業資金がない可能性があります。
特に創業初期は売上が安定しないため、十分な運転資金がなければ、経営が立ち行かなくなる可能性が高まります。
日本政策金融公庫の調査によると、新規創業企業の約7割が5年以内に廃業しており、その主な理由は「資金繰りの悪化」と報告されています。
また、予期せぬ経済変動や緊急事態に対応するための資金的余裕がないため、小さなトラブルが致命的な危機に発展するリスクも高くなります。
そのため、1円で会社を設立するとしても、実際には事業運営に必要な資金を別途確保することが重要です。
取引先からの信用度の問題
企業間取引において、相手先企業の資本金額は信用度の一つの指標として見られることが一般的です。
資本金が1円という企業は、取引先から「経営基盤が弱い」「長期的な取引が困難かもしれない」といった懸念を持たれる可能性があります。
特に以下のような場面で信用度の問題が表面化することがあります:
- 大手企業との取引開始時
- 新規取引先との契約時
- 公共事業の入札参加時
- リース契約や賃貸契約時
実際、ある調査によると、約40%の企業が取引先選定時に資本金額を考慮すると回答しています。
資本金1円の会社は、実績や信用を積み上げるまでの間、取引機会を逃す可能性があることを認識しておく必要があります。
また、民間企業だけでなく、自治体や公共機関との取引においても、入札資格要件に資本金の最低額が設定されていることがあり、参加できない場合があります。
融資を受けにくい現実
金融機関は融資判断において、企業の財務状況を重視します。
資本金は企業の財務基盤を示す重要な指標の一つであり、資本金1円の企業は金融機関からの融資を受けるハードルが高くなります。
金融機関が融資審査で見る主なポイントは以下の通りです:
審査項目 | 資本金1円の場合の評価 |
---|---|
財務基盤 | 脆弱と判断されやすい |
返済能力 | 不安視される傾向がある |
事業継続性 | リスクが高いと評価されがち |
経営者の事業への投資姿勢 | 消極的と見られる可能性がある |
日本銀行の企業金融調査によると、資本金1000万円未満の小規模企業は、資本金規模が大きい企業と比較して融資審査通過率が約30%低いというデータもあります。
特に創業間もない1円株式会社の場合、この差はさらに広がる傾向にあります。
また、日本政策金融公庫などの政府系金融機関でも、一定の自己資金比率を融資条件としている場合が多く、資本金が少ない企業は条件を満たせないケースがあります。
倒産リスクの高さ
資本金は企業の損失に対するバッファー(緩衝材)としての役割も果たします。
資本金が少ない企業は、経営が悪化した際の耐久力が弱く、倒産リスクが高まる傾向があります。
東京商工リサーチの調査によると、資本金1000万円未満の企業の倒産確率は、資本金1000万円以上の企業と比較して約1.5倍高いというデータがあります。
特に事業開始から3年以内の企業は最もリスクが高いとされています。
倒産リスクが高い要因として、以下の点が挙げられます:
- 経営危機に対する財務的余裕がない
- 資金繰りの悪化に対する耐性が弱い
- 急な売上減少に対応できない
- 設備投資や事業拡大の資金確保が困難
- 取引先の支払い遅延など不測の事態への対応力不足
さらに、資本金が少ないことで、債権者からの法的整理(破産申立など)のリスクも高まります。
一般的に、債権者は回収見込みが低いと判断した場合、早期に法的手続きに移行する傾向があります。
以上のデメリットは、1円株式会社設立を否定するものではなく、リスクを認識した上で適切な対策を講じることの重要性を示しています。
例えば、資本金は少なくても十分な事業資金を用意する、早期に信用実績を積み上げる、将来的な増資計画を持つなどの対策が考えられます。
企業の成長段階に合わせて資本政策を見直していくことが、長期的な経営安定につながるでしょう。
1円株式会社の具体的な作り方
1円株式会社を設立する具体的な方法について解説します。
会社法の改正により最低資本金制度が撤廃され、理論上は1円から株式会社を設立することが可能となりました。
ここでは、設立前の準備から登記申請までの流れを詳しく見ていきましょう。
設立前の準備
株式会社を設立する前には、いくつかの重要な準備作業が必要です。
ビジネスの成功に直結する重要なステップですので、慎重に検討しましょう。
事業計画の策定
会社設立の第一歩は、しっかりとした事業計画の策定です。
資本金が1円でスタートする場合、特に綿密な計画が必要となります。
事業計画には以下の要素を含めることが重要です:
- ビジネスモデルの詳細
- 市場分析とターゲット顧客の特定
- 競合他社の分析
- 収益計画と収支予測
- 必要資金と調達方法
- マーケティング戦略
特に1円スタートの場合、運転資金をどのように確保するかの計画が重要です。
実質的な事業資金として、個人からの貸付金や役員報酬の支払い遅延などの方法が考えられますが、税務上の注意点もありますので専門家に相談することをおすすめします。
会社の目的決定
会社の「目的」は定款に記載する必要があり、将来的に行う可能性のある事業内容をすべて記載しておく必要があります。
定款に記載されていない事業を行うには、定款変更の手続きが必要となるため、ある程度幅広く設定しておくことが一般的です。
◆一般的に記載される目的の例:
- インターネットを利用した各種情報提供サービス
- ウェブサイトの企画、制作、運営及び管理
- 広告代理業
- 各種イベントの企画及び運営
- 前各号に付帯関連する一切の事業
特に最後の「付帯関連する一切の事業」という文言を入れておくことで、ある程度の柔軟性を持たせることができます。
ただし、許認可が必要な事業(建設業、不動産業、飲食業など)については具体的に記載が必要です。
会社名(商号)の決定
会社名(商号)は、ビジネスの顔となる重要な要素です。
以下のポイントを考慮して決定しましょう:
- 覚えやすく、発音しやすい名前
- 事業内容や企業理念を反映したもの
- 同一市区町村内で同じ商号が存在しないか確認
- インターネットでのドメイン取得が可能か
- 商標登録の可能性
商号に「株式会社」の文字を入れる必要がありますが、前に置く場合(株式会社〇〇)と後に置く場合(〇〇株式会社)のどちらも可能です。
また、英語の表記(〇〇 Inc.など)を併記することもできます。
法務局のウェブサイトで既存の会社名を検索し、同一市区町村内で同じ商号が使われていないことを確認しましょう。
必要書類の準備
会社設立には様々な書類の準備が必要です。
1円会社でも通常の株式会社と同様の手続きが必要となります。
定款の作成
定款は会社の基本ルールを定めた憲法のような書類です。
必須記載事項と任意記載事項があります。
◆必須記載事項:
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店所在地(市区町村まで)
- 設立に際して出資される財産の価額または最低額
- 発起人の氏名および住所
資本金を1円とする場合は、発行する株式数も少なくすることができます。
例えば、1株1円で1株のみ発行することも可能です。
しかし、将来的な増資や株式分割を考慮すると、1株1円で100株程度発行するなどの方法も検討できます。
定款作成のポイントとして、発起人が1人の場合でも複数の取締役を置くことができる旨や、監査役を置かないことなどを明記しておくと良いでしょう。
電子定款認証の手続き
作成した定款は公証役場で認証を受ける必要があります。
従来は紙の定款に収入印紙4万円を貼付する必要がありましたが、電子定款認証を利用することで印紙税が不要となり、大幅なコスト削減が可能です。
◆電子定款認証の手順:
- 電子証明書付きの電子署名を定款に付す(マイナンバーカードの電子証明書機能や法務省の商業登記電子証明書が利用可能)
- 公証役場に電子メールで定款データを送付
- 公証役場で面談予約を取る(電話やメールで予約可能)
- 公証役場に発起人が出向き、認証手続きを行う
- 認証済み電子定款データを受け取る
電子定款認証の費用は公証人手数料として約5万円程度です。
印紙税4万円が不要になるため、従来の紙の定款と比べて経済的です。
印鑑証明書の取得
発起人および取締役就任予定者の印鑑証明書が必要になります。
取得してから3ヶ月以内のものが有効です。
また、代表取締役予定者は会社実印を作成し、登記申請時に届け出ます。
◆必要な印鑑:
- 会社実印(法務局に届け出る会社の正式な印鑑)
- 代表者印(銀行口座開設や契約書に使用)
- 角印(社内書類や請求書などに使用)
印鑑は信頼性の高い印鑑店で作成することをお勧めします。
特に会社実印は耐久性のある素材で、偽造されにくいデザインのものを選びましょう。
登記申請の手続き
必要書類が揃ったら、いよいよ法務局への登記申請を行います。
この手続きにより、正式に株式会社が誕生します。
法務局への登記申請
会社の本店所在地を管轄する法務局に登記申請を行います。
申請方法には窓口申請、郵送申請、オンライン申請の3種類があります。
◆必要書類:
- 株式会社設立登記申請書
- 定款(認証済みのもの)
- 発起人の決定書(取締役・代表取締役の選任に関する書類)
- 取締役・代表取締役の就任承諾書
- 発起人の印鑑証明書
- 取締役全員の印鑑証明書
- 資本金の払込みを証する書面(払込証明書または銀行残高証明書)
- 本店所在地の証明書類(賃貸借契約書のコピーなど)
- 登録免許税の納付書
1円会社の場合、資本金の払込みを証する書面として、資本金の払込みが行われたことを示す書類(払込証明書)を用意します。
発起人の口座に1円以上の残高があることを示す通帳のコピーなどが一般的に用いられます。
必要な登録免許税
会社設立時には登録免許税が必要です。
資本金の額に関わらず、株式会社の設立登記には最低15万円の登録免許税がかかります。
会社の種類 | 登録免許税の計算方法 | 最低税額 |
---|---|---|
株式会社 | 資本金の0.7% | 15万円 |
合同会社 | 資本金の0.7% | 6万円 |
1円株式会社の場合、資本金の0.7%は0.007円となりますが、最低税額の15万円を納付する必要があります。
収入印紙で納付するか、オンライン申請の場合は電子納付も可能です。
会社設立後の各種届出
会社設立登記が完了したら、2週間以内に以下の各種届出を行う必要があります:
- 税務署への届出
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
- 消費税課税事業者選択届出書(または免税事業者届出書)
- 都道府県税事務所への届出
- 法人設立届
- 事業開始等申告書
- 市区町村への届出
- 法人設立届
- 年金事務所への届出(従業員を雇用する場合)
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- 労働基準監督署への届出(従業員を雇用する場合)
- 労働保険関係成立届
- 雇用保険適用事業所設置届
これらの届出を怠ると、後々のトラブルの原因となりますので、期限内に確実に提出しましょう。
また、銀行口座の開設や各種保険の加入なども早めに済ませておくことをお勧めします。
1円株式会社の場合、特に銀行口座開設には時間がかかることがあります。
資本金額が少ないことから、審査が厳しくなる傾向があるためです。
法人口座開設には通常、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、印鑑証明書、定款、代表者の本人確認書類などが必要となります。
以上が1円株式会社の設立手続きの流れです。資本金は1円でも、設立に必要な費用(登録免許税、定款認証費用など)は通常の株式会社とほぼ同じであることに注意が必要です。
最低限20万円前後の費用を見込んでおきましょう。
専門家に依頼する場合は、さらに報酬が加算されます。
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1円株式会社設立にかかる費用の内訳
1円株式会社の設立において「資本金は1円でよい」という点が注目されがちですが、実際には様々な費用が発生します。
本章では、1円株式会社を設立する際に必要となる費用の全体像を詳しく解説します。
定款認証費用
株式会社設立時には、定款を作成し公証人による認証を受ける必要があります。
この際に発生する主な費用は以下の通りです。
項目 | 費用 | 備考 |
---|---|---|
定款認証手数料 | 50,000円 | 公証役場に支払う公定費用 |
収入印紙代 | 40,000円 | 紙の定款を作成する場合 |
電子定款認証費用 | 約5,000円 | 電子定款の場合(収入印紙代不要) |
電子定款を利用する場合、収入印紙代の40,000円が不要となるため、大幅なコスト削減が可能です。
電子定款の場合は電子証明書の取得費用(約3,000円〜5,000円)と公証役場での電子データ保存料(約500円〜1,000円)が必要となります。
電子定款の作成には電子署名が必要となりますが、マイナンバーカードの電子証明書機能を利用することもできるようになり、その場合は追加費用なしで対応可能です。
登録免許税
法務局で会社の登記を行う際には、登録免許税が必要です。
この税金は資本金の額に応じて変動しますが、1円株式会社の場合の登録免許税は以下のように計算されます。
項目 | 金額 | 計算方法 |
---|---|---|
資本金課税分 | 最低150,000円 | 資本金の0.7%(最低税額15万円) |
定款認証分 | 0円 | 電子定款の場合 |
資本金が1円であっても、登録免許税については最低税額の150,000円が課税されます。
これは会社法上の規定であり、資本金の額に関わらず一律で課される最低金額となっています。
なお、登記申請時には収入印紙での納付が必要となりますので、事前に郵便局などで必要額の収入印紙を購入しておく必要があります。
その他必要経費
1円株式会社の設立に際しては、定款認証費用と登録免許税以外にも様々な実務的な費用が発生します。
これらの費用は会社設立の手続きを進める上で避けられないものです。
項目 | 概算費用 | 備考 |
---|---|---|
印鑑作成費 | 10,000円〜30,000円 | 会社実印、銀行印、角印など |
印鑑証明書取得費用 | 約450円/通 | 発起人の印鑑証明書 |
登記事項証明書取得費用 | 約600円/通 | 登記完了後必要に応じて |
定款謄本取得費用 | 約2,000円 | 銀行口座開設時などに必要 |
資本金 | 1円 | 実際の会社運営資金は別途必要 |
また、会社設立後に必要となる費用として、以下のようなものも準備しておくと良いでしょう。
- 会社の看板や表札:5,000円〜30,000円
- 名刺作成費:3,000円〜10,000円
- 会社案内パンフレット:30,000円〜100,000円
- ウェブサイト制作費:100,000円〜
- 事務用品費:10,000円〜50,000円
これらの費用は必須ではありませんが、会社としての活動を開始する際には必要となることが多いため、事前に予算を確保しておくことをお勧めします。
専門家に依頼する場合の費用
会社設立の手続きを自分で行うのが難しい場合や、時間的制約がある場合には、専門家に依頼することも一つの選択肢です。
専門家に依頼する場合の費用目安は以下の通りです。
依頼先 | 費用相場 | サービス内容 |
---|---|---|
司法書士 | 80,000円〜150,000円 | 登記申請手続き代行 |
行政書士 | 50,000円〜100,000円 | 定款作成、各種書類作成 |
税理士 | 30,000円〜100,000円 | 設立時の税務相談、開業届等 |
会社設立代行業者 | 30,000円〜150,000円 | 一括での会社設立サポート |
専門家に依頼する場合、上記の報酬とは別に定款認証費用や登録免許税などの実費は別途必要となります。
ただし、一括でのパッケージプランなどを提供している業者もありますので、複数の事務所に見積もりを依頼して比較検討することをお勧めします。
なお、専門家に依頼する最大のメリットは、手続きの確実性と時間の節約です。
特に初めて会社を設立する場合、書類の不備などにより手続きがスムーズに進まないリスクがありますが、専門家に依頼することでそうしたリスクを軽減できます。
オンライン会社設立サービスの活用
近年では、インターネット上で会社設立手続きを支援するサービスも増えています。
これらのサービスを利用すると、比較的低コストで会社設立が可能です。
サービス名 | 費用目安 | 特徴 |
---|---|---|
Graffer電子定款 | 無料〜10,000円 | 電子定款作成に特化したサービス |
freee会社設立 | 0円〜69,800円 | 会計ソフトと連携したプラン |
会社設立オンライン | 29,800円〜 | 登記申請までサポート |
これらのサービスを利用する場合でも、定款認証費用(電子定款の場合は約5万円)や登録免許税(15万円)などの法定費用は別途必要となります。
サービス内容と料金プランをよく確認した上で利用を検討しましょう。
1円株式会社設立後の運営のポイント
1円で株式会社を設立したら、次のステップは適切な運営です。
資本金が少ない企業として特有の課題やチャンスがありますので、ここでは運営を成功させるための重要なポイントを解説します。
資本金の増資タイミング
1円株式会社の大きな特徴は、設立時の資本金が最小限で済むということですが、事業の成長に合わせて資本金を増やすことが必要になるケースがあります。
適切な増資タイミングを見極めることが経営戦略上重要です。
増資を検討すべき主なタイミングとしては、以下のようなケースが挙げられます:
- 取引先から信用力向上のために求められたとき
- 金融機関からの融資条件として要請されたとき
- 公共事業の入札参加資格を得るとき
- 業界団体への加入条件を満たすとき
- 大型の設備投資を行うとき
- 会社の信用力を高めるブランディング戦略の一環として
増資方法としては、株主からの追加出資、第三者割当増資、利益剰余金の資本組入れなどがあります。
特に事業が軌道に乗り始めた時期には、会社の社会的評価を高めるためにも1000万円程度への増資を検討すると良いでしょう。
増資金額 | メリット | 適したタイミング |
---|---|---|
100万円 | 最低限の信用力向上、銀行口座開設がスムーズに | 創業半年〜1年 |
500万円 | ある程度の取引先からの信用獲得 | 事業が安定してきた時期 |
1000万円 | 融資審査で有利、公共入札参加資格の取得 | 本格的な事業拡大期 |
3000万円以上 | 大型案件の受注、高い社会的信用 | 業界内での地位確立後 |
なお、増資手続きには登記変更が必要で、登録免許税などのコストがかかることも考慮しておきましょう。
税務上の注意点
1円株式会社として事業を運営する上で、税務面での適切な対応は利益の最大化と法令遵守の両面で非常に重要です。
資本金が少ない場合でも、税務署からの監視は他の法人と変わりません。
法人税の基本と節税対策
資本金1円〜1億円未満の法人は「中小法人」として税制上の優遇措置を受けられます。
具体的には、年800万円以下の所得部分については税率が15%(本則:23.2%)に軽減されます。
この特例を活用した計画的な利益コントロールが重要です。
また、中小法人向けの税制優遇措置として以下のようなものがあります:
- 中小企業投資促進税制(一定の設備投資で税額控除や特別償却が可能)
- 少額減価償却資産の特例(30万円未満の資産を一括償却可能)
- 交際費等の損金算入特例(年間800万円までの交際費の一部を経費計上可能)
消費税の特例と注意点
資本金1,000万円未満の新設法人は、設立から2年間は消費税の納税義務が免除される特例があります。
ただし、設立1期目の課税売上が1,000万円を超えると2期目から、2期目も1,000万円を超えると3期目からは納税義務が発生します。
消費税の免税事業者であっても、将来的な課税事業者化を見据えた経理処理や請求書の発行方法を検討しておくことが重要です。
特にインボイス制度への対応は早めに準備しましょう。
役員報酬と経費処理
1円株式会社の経営者は、自身の役員報酬を適切に設定することが税務戦略上重要です。
役員報酬は原則として定期同額給与として支給し、年度途中での変更は制限されています。
事業拡大期には適正な報酬額を設定し、個人と法人の税負担バランスを最適化することで、全体としての節税効果を高めることができます。
また、経費処理においては、特に少額資本金の会社は税務調査の際に個人的費用との区別について厳しくチェックされる傾向があるため、適切な証憑管理を徹底しましょう。
社会的信用を高める方法
1円株式会社は設立のハードルは低いものの、資本金の少なさから取引先や金融機関からの信用獲得に課題を抱えることがあります。
以下の方法で計画的に社会的信用を高めていきましょう。
ウェブサイトとオンラインプレゼンスの強化
現代のビジネス環境では、会社のウェブサイトやSNSアカウントが企業の顔となります。
専門性の高いコンテンツの発信、清潔感のあるデザイン、そして定期的な更新を心がけることで、資本金の少なさをカバーする信頼性を構築できます。
- 独自ドメインでのウェブサイト運営
- 会社概要や代表者プロフィールの充実
- 事業内容や実績の詳細な掲載
- 顧客の声や事例紹介によるソーシャルプルーフの提示
- ブログやSNSでの専門知識の発信
事業実績の着実な積み上げ
小さな仕事から確実に成果を出し、実績を積み重ねることが最も確実な信用構築の方法です。
特に創業初期は、以下のような戦略が有効です:
- 取引先との約束事項を必ず守る(納期、品質、予算など)
- 完了した取引についての感謝状や推薦文をもらう
- 少額案件から始めて、徐々に取引規模を拡大する
- 特定分野での専門性や強みを作り、差別化する
適切な事務所設定と法人イメージの構築
バーチャルオフィスも選択肢ですが、可能であれば実態のある事務所を構えることで信用力は大きく向上します。
また、以下の点にも注意が必要です:
- 法人名義の電話番号と適切な応対体制
- 統一された企業ブランディング(名刺、パンフレット等)
- 必要に応じた業界団体や商工会議所への加入
- 各種認証・資格の取得
情報開示と透明性の確保
資本金が少ないからこそ、経営の透明性を高めることが信頼獲得につながります。
以下のような取り組みが効果的です:
- 決算情報の適切な開示(取引先の求めに応じて)
- 事業計画や成長戦略の明確化
- 自社の強みと弱みを正直に伝える姿勢
- 社会貢献活動への参加
信用構築の段階 | 具体的な施策 | 期待される効果 |
---|---|---|
創業直後 | 基本的なオンラインプレゼンス確立、名刺・パンフレット整備 | 最低限の企業としての体裁構築 |
創業半年〜1年 | 小規模な取引実績の積み上げ、専門性のアピール | 小規模取引先からの継続的な受注 |
1〜2年目 | 資本金増資、事業拡大、メディア露出 | 中規模案件の獲得、金融機関との関係構築 |
3年目以降 | 業界内での評価獲得、さらなる資本強化 | 企業としての社会的地位確立 |
1円株式会社として創業しても、適切な経営戦略と信用構築の取り組みによって、数年以内に業界内での地位を確立することは十分に可能です。
重要なのは、資本金の少なさをカバーする努力を継続的に行うことです。
1円株式会社に関するよくある質問
1円株式会社の設立を検討する際、多くの方が同じような疑問や不安を抱えています。
ここでは、よくある質問とその回答をご紹介します。
実際に設立を進める前に、ぜひ参考にしてください。
本当に1円だけで設立できるの?
「1円株式会社」という名称から、本当に1円だけで会社が設立できるのか疑問に思われる方も多いでしょう。
結論から言えば、資本金としては確かに1円から設立可能ですが、設立手続きには別途費用がかかります。
実際には、会社設立には以下のような費用が必要です:
項目 | 費用の目安 | 備考 |
---|---|---|
定款認証費用 | 約50,000円 | 電子定款の場合は公証人手数料のみ |
登録免許税 | 150,000円 | 資本金額に関わらず一律 |
印鑑作成費用 | 10,000〜20,000円 | 会社実印、銀行印など |
その他諸経費 | 10,000〜30,000円 | 謄本取得費用、郵送費など |
つまり、資本金は1円からでも、設立手続き全体では約20〜25万円程度の費用が必要になります。ただし、司法書士や行政書士などの専門家に依頼する場合は、さらに手数料が加算されます。
銀行口座は開設できるの?
1円株式会社でも法人口座の開設は基本的には可能ですが、実際には銀行によって対応が異なります。
大手銀行では資本金額が少ない会社に対して審査が厳しくなる傾向があり、特に1円資本金の場合は口座開設を断られるケースもあります。
一方、地方銀行やネット銀行では比較的開設しやすい傾向があります。
口座開設の審査をスムーズに通過するためのポイントとしては、以下のことが挙げられます:
- 事業計画書をしっかり準備する
- 役員の個人資産や経歴が審査されることを認識しておく
- 開業前であれば、ある程度の資本金(例えば10万円以上)にしておくことも検討する
- 取引実績を作ってから申請する(開業後しばらく経過してから)
- 代表者が個人で取引のある銀行に申し込む
なお、実務上は当面個人口座で対応し、事業が軌道に乗った段階で法人口座を開設するという方法も一般的です。
ただし、その場合は個人と法人の会計を明確に区分することが重要です。
後から資本金を増やすことはできる?
はい、1円株式会社として設立した後でも、資本金を増額することは可能です。
これを「増資」と言います。増資の方法には主に以下の2つがあります:
- 株主からの追加出資による増資:既存株主や新規株主から新たな出資を受け入れる方法
- 準備金・剰余金の資本組入れによる増資:会社に蓄積された利益などを資本金に振り替える方法
増資の手続きは以下のようになります:
- 株主総会での特別決議(資本金額変更の決議)
- 増資金額の払い込み(株主からの追加出資の場合)
- 変更登記申請(法務局への届出)
増資のタイミングとしては、以下のような場合が考えられます:
- 取引先からの信用を高めたい時
- 金融機関からの融資を受けやすくしたい時
- 事業拡大のための資金が必要な時
- 会社の経営基盤を強化したい時
なお、増資には登録免許税(増加する資本金額の0.7%、最低3万円)などの費用がかかることも覚えておきましょう。
個人事業主と比べてどちらがおすすめ?
1円株式会社と個人事業主、どちらを選ぶべきかは事業の状況や将来計画によって異なります。
以下の比較表を参考にしてください:
項目 | 1円株式会社 | 個人事業主 |
---|---|---|
設立コスト | 約20〜25万円 | 数千円(開業届の提出のみ) |
社会的信用 | 法人格があり比較的高い | 個人名義のため低め |
税金の仕組み | 法人税(15〜23.2%)+住民税など | 所得税(5〜45%の累進課税)+住民税など |
経費計上 | 比較的自由度が高い | 事業との関連性が厳しく問われる |
損失の繰越 | 最大10年間可能 | 最大3年間可能 |
責任範囲 | 原則として会社財産のみ | 無限責任(個人資産も対象) |
事務負担 | 決算書作成、税務申告など複雑 | 比較的シンプル |
おすすめの選択基準としては:
- 株式会社がおすすめのケース
- 年間所得が概ね500万円を超える見込みがある
- 取引先が法人相手の商談が多い
- 従業員を雇用する予定がある
- 事業拡大・資金調達の予定がある
- 個人資産を守りたい(責任の分離)
- 個人事業主がおすすめのケース
- 起業したばかりで収入が安定していない
- 専門職や士業、フリーランスとして活動する
- 副業として事業を始める
- 事務手続きをシンプルに済ませたい
- 設立コストを抑えたい
多くの起業家は、最初は個人事業主として事業を始め、売上が安定してきたタイミングで法人成りするというステップを踏むケースが一般的です。
ただし、創業時から取引先企業との関係や融資の必要性などを考慮すると、最初から法人で始める方が有利なケースもあります。
1円株式会社は社会保険に加入できるの?
1円株式会社であっても、法人である以上、一定の条件を満たせば社会保険に加入する義務があります。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、原則として従業員を1人でも雇用する法人は強制加入となります。
また、役員のみの会社であっても、法人の場合は加入義務があります。
ただし、以下のような例外的なケースもあります:
- 法人登記をしていても実態が伴わない休眠会社
- 役員報酬を支払っていない(無報酬の)役員のみの会社
- 従業員が全員短時間労働者(週20時間未満など)の会社
社会保険加入のメリットとしては、国民健康保険と比べて保険料負担が軽減されることがあること、傷病手当金や出産手当金が支給されること、厚生年金の受給額が国民年金より手厚いことなどが挙げられます。
一方、デメリットとしては、会社と個人で折半とはいえ保険料の負担が生じること、社会保険の手続きが煩雑になることなどがあります。
1円株式会社でも融資は受けられる?
1円株式会社でも融資を受けることは可能ですが、資本金が少ないことで審査が厳しくなる傾向があります。
特に銀行などの民間金融機関からの融資は、会社の自己資本が少ないことが懸念材料となりやすいです。
融資を受けやすくするためのポイントとしては:
- 事業計画をしっかり立てる:収支計画や返済計画を具体的に示す
- 代表者の信用力を高める:個人の信用情報に問題がないようにする
- 実績を作る:少額でも継続的な売上を立て、事業継続性を示す
- 担保や保証人を用意する:特に創業間もない場合は必要になることが多い
- 公的融資制度を活用する:日本政策金融公庫の「新創業融資制度」など
特に日本政策金融公庫は創業者向けの融資制度が充実しており、1円株式会社でも比較的融資を受けやすい傾向があります。
また、自治体の制度融資や創業支援融資なども視野に入れると良いでしょう。
なお、事業が軌道に乗ってきた段階で増資を検討することも、融資審査において有利に働く場合があります。
1円株式会社でも大きな契約は取れる?
1円株式会社でも契約自体は可能ですが、大型契約や重要な取引においては取引先から信用面で懸念されるケースがあります。
特に以下のようなケースでは影響が出やすいです:
- 大企業との取引(取引先の審査基準で引っかかる場合がある)
- 官公庁の入札案件(参加資格に資本金の条件がある場合も)
- 高額の請負契約(支払い能力や履行能力への不安)
- 長期的な継続取引(経営安定性への懸念)
これらの懸念を払拭するための対策としては:
- 実績を積み重ねる:小さな案件から確実に実績を作っていく
- 専門性をアピールする:独自の技術やノウハウをPRする
- 経営の透明性を高める:決算情報を適切に開示する
- 適切なタイミングでの増資:重要な商談前に資本金を増やす
- 保証や担保の提供:必要に応じて契約履行保証などを用意する
実際のビジネスでは、最初のうちは小規模案件から始めて信頼関係を構築し、徐々に大きな案件に挑戦していくというステップを踏むことが一般的です。
また、会社の実績よりも代表者個人の実績や経験、スキルをアピールすることも有効な戦略です。
まとめ
1円株式会社は、会社法改正により誕生した、最低資本金の制限なく設立できる株式会社の形態です。
最大のメリットは少ない資金で起業できることですが、資金力不足によるリスクや信用面での課題も存在します。
設立手続きとしては、事業計画の策定から始まり、定款作成、電子認証、登記申請と進みますが、実際には資本金以外に定款認証費用や登録免許税などで20万円前後の費用が必要となります。
運営においては、成長に合わせた資本金の増資や社会的信用の構築が重要です。
株式会社リクルートやサイバーエージェントなども創業時は少額資本から始まっていることを考えると、事業内容と将来性が明確であれば、1円株式会社からスタートすることも十分に現実的な選択肢といえるでしょう。
重要なのは資本金の額ではなく、事業計画の確かさと経営者の姿勢なのです。