昔ながらの信頼感がある「有限会社」を新しく作りたいと考えていませんか?
結論からお伝えすると、2006年の会社法施行により、現在は有限会社を新たに設立することはできません。
しかし、M&Aで既存の会社を買収すれば、有限会社の経営者になることは可能です。
本記事では、有限会社が新設できない理由や買収時の注意点のほか、これから起業する方向けに「株式会社」と「合同会社」の違いや選び方、既存の有限会社を株式会社へ変更する手続きまで徹底解説します。
読むことで、自分に最適な会社設立の選択肢が明確になります。
1. 有限会社を作るには?そもそも現在も作れるのか
「新しく事業を始めるにあたって、信頼感のある有限会社を作りたい」「有限会社を設立するための具体的な手続きを知りたい」とお考えの方もいるかもしれません。
しかし結論から申し上げますと、現在はどのような手続きを行っても新しく有限会社を作ることはできません。
ここでは、なぜ有限会社が作れなくなったのか、その背景にある法律の改正と現在の法的な扱いについて分かりやすく解説します。
1.1 有限会社は現在新設することができない
かつては中小企業や個人事業主の法人化において非常に人気があった有限会社ですが、現在は法律上、新規の設立手続きが完全に廃止されています。
そのため、行政書士や司法書士などの専門家に依頼したり、法務局へ書類を提出したりしても、新しく有限会社を立ち上げることは不可能です。
これから新たに会社を設立する場合は、有限会社ではなく「株式会社」や「合同会社」といった、現行の法律で認められている会社形態から選択する必要があります。
1.2 会社法改正と特例有限会社の誕生
有限会社が新設できなくなった理由は、2006年(平成18年)5月1日に施行された「会社法」による大幅な制度改正にあります。
2006年4月以前は「有限会社法」に基づき、資本金300万円以上、取締役1名以上という条件で手軽に設立できる法人形態として有限会社が認められていました。
しかし、会社法の施行に伴い有限会社法が廃止され、会社の分類が整備されました。
当時すでに存在していた有限会社については、事業の継続に支障が出ないよう「特例有限会社」という特例措置が適用され、株式会社の一種として存続することになりました。
現在存在する有限会社は、すべて2006年4月以前に設立された会社です。
| 比較項目 | 会社法施行前(2006年4月以前) | 会社法施行後(2006年5月以降) |
|---|---|---|
| 新規設立の可否 | 可能(資本金300万円以上) | 新設不可能(選択肢から除外) |
| 根拠となる法律 | 有限会社法 | 会社法(整備法) |
| 既存の有限会社の扱い | 有限会社 | 特例有限会社(法律上は株式会社の一種) |
| 役員の任期制限 | なし(任期の更新手続きが不要) | 特例有限会社のまま存続する場合は任期なしを維持 |
特例有限会社は、法律上の区分としては株式会社に含まれますが、会社名に「有限会社」という文字を使い続けることが認められています。
そのため、現在残っている有限会社は長年の事業実績を持つ会社として信頼されているケースが多く見られます。
2. どうしても有限会社の社長になりたい場合の対処法

2006年5月の会社法施行により、新たな有限会社の設立は全面的に認められなくなりました。
しかし、現在でも街中や取引先などで「有限会社」という社名を掲げて事業を行っている企業を目にすることがあります。
これは法律上「特例有限会社」として存続している会社です。
すでに法改正から長い年月が経過しているため、新規に作ることができない有限会社には「長く事業を継続している信頼できる企業」という独自のブランドイメージが定着しています。
制度上は新しく設立できないものの、どうしても「有限会社の社長」としてビジネスを始めたい、あるいは有限会社の看板を活用したい場合には、特定の手段を用いることでその夢を実現できます。
2.1 既存の有限会社を買収する
新規設立が不可能な有限会社の社長になる唯一の方法は、現在存続している既存の特例有限会社をM&Aや株式譲渡によって買収することです。
後継者不足などで事業承継に悩んでいる既存の有限会社から株式を取得し、代表取締役(社長)のポジションを引き継ぐことで、法的に有限会社の経営者となることができます。
買収を進める際は、自力で対象企業を探すのは容易ではないため、事業承継マッチングサイトやM&A仲介会社を利用するのが一般的です。
株式譲渡の手続きを行い、法務局にて代表取締役の変更登記を完了させることで、晴れて有限会社の代表取締役として就任できます。
2.1.1 M&Aを利用するメリット
ゼロから新しい会社を設立するのではなく、既存の有限会社をM&Aで買収して社長になることには、単に社名を手に入れる以上の大きな経営上の強みがあります。
最大のメリットは、「有限会社」という希少な商号と高い信用力をそのまま引き継げる点です。
また、既存の会社が長年培ってきた取引先、顧客ネットワーク、許認可、さらには熟練した従業員や事業ノウハウをそのまま継続して利用できるため、事業の立ち上げ期におけるリスクを劇的に軽減できます。
| メリットの項目 | 具体的な内容 | 経営上の主な効果 |
|---|---|---|
| 高い信用力とブランドの継承 | 2006年以前から継続して事業を行っている証明となり、顧客や金融機関からの信頼を得やすい。 | 新規取引の開拓や銀行融資の審査において優位に働く。 |
| 役員の任期が無制限 | 特例有限会社には取締役の任期制限がないため、定期的な役員重任登記が不要。 | 役員変更の手続きにかかる登録免許税や司法書士費用を削減できる。 |
| 決算公告義務の免除 | 株式会社と異なり、毎期の決算内容を官報等に公告する義務がない。 | 官報掲載費用の削減および財務情報の非公開による機密保持が可能。 |
| 許認可や事業基盤の引き継ぎ | 法人の人格がそのまま継続するため、一部の許認可や既存契約をスムーズに維持できる。 | 開業準備の時間を大幅に短縮し、買収直後から収益を発生させられる。 |
2.1.2 買収時の注意点とリスク
有限会社の買収には多くのメリットがある一方で、新設法人にはない固有のリスクや注意点が存在します。
買収後に後悔しないためには、専門的な調査と事前の準備が欠かせません。最も注意すべきなのは、買収対象の会社が抱えている簿外債務や過去のトラブルです。
これらを避けるためには、専門家による入念なデューデリジェンス(買収調査)を実施することが極めて重要となります。
さらに、買収手続きの途中で誤って商号変更手続きを行ってしまうと、一度株式会社へ移行した会社は二度と有限会社に戻すことができないため、手続上の細かな確認も必要です。
| リスク・注意点 | 懸念される問題点 | 事前の回避策・対応策 |
|---|---|---|
| 簿外債務・隠れ負債 | 決算書に記載されていない未払い残業代や保証債務、税金の滞納などを引き継いでしまうリスク。 | 公認会計士や弁護士による財務・法務デューデリジェンスを徹底する。 |
| 株式会社への移行不可逆性 | 特例有限会社から株式会社への商号変更を行うと、元の有限会社には再変更できない。 | 登記手続き時に商号変更の申請をせず、取締役変更登記のみを行うよう確認する。 |
| 人材や取引先の離脱 | 経営者が交代することに対する不安から、既存の従業員や重要顧客が離れてしまう可能性。 | 買収前にキーマンとの面談を行い、買収後の雇用条件や方針について合意を形成しておく。 |
| 休眠会社買収の税務リスク | 長期間活動していない休眠状態の有限会社を買収した場合、繰越欠損金の利用制限や税務署からの指摘を受けるリスク。 | 税理士に相談し、過去の申告状況や税務上のリスクを事前に検証する。 |
3. これから会社を作るには株式会社と合同会社のどちらが良いか

現在、有限会社を新しく設立することはできないため、これから起業や法人化を目指す場合は「株式会社」または「合同会社」のいずれかを選択するのが一般的です。
どちらの会社形態が適しているかは、事業の規模や目的、設立予算によって異なります。
それぞれのメリットとデメリットを正しく理解し、自社に最適な形態を選びましょう。
3.1 株式会社を作るメリットとデメリット
株式会社は、日本国内で最も認知度が高く、一般的な会社形態です。
株式会社を作る最大の実用的な利点は、高い社会的信用を得やすく資金調達の手段が豊富であることです。
出資者から資金を募って株式を発行できるため、将来的な事業拡大や株式上場を目指す場合に適しています。
また、大手企業との取引や人材採用においても、信用度の高さが有利に働く場面が多く存在します。
一方で、設立費用や維持コストが比較的高く手続きが複雑である点がデメリットです。
設立時には定款の認証手数料や登録免許税などで最低でも約20万円の初期費用がかかります。
さらに、役員の任期ごとに登記の更新手続きが必要となるほか、毎決算期に決算公告を行う義務が発生します。
3.2 合同会社を作るメリットとデメリット
合同会社は、2006年の会社法改正により新設された比較的新しい会社形態であり、近年設立件数が増加しています。
合同会社の主な強みは、設立費用を抑えられ自由度の高い経営体制を構築できる点にあります。
定款の公証人認証が不要なため、登録免許税とあわせても約6万円から設立が可能です。
役員の任期がないため定期的な重任登記の手間や費用がかからず、決算公告の義務もありません。
また、定款によって利益の配分を出資比率ではなく貢献度に応じて自由に定められる柔軟性も備えています。
しかし、株式会社と比較すると知名度や社会的信用度においてやや劣る場合がある点には注意が必要です。
株式を発行して広く資金を調達することはできず、上場を目指すこともできません。
また、出資者全員が経営権を持つ持分会社であるため、出資者間で意見が対立した際に意思決定が難航するリスクがあります。
3.3 有限会社との制度の違いを比較
新規設立を選択する際の参考として、かつての有限会社(特例有限会社)と、新設可能な株式会社・合同会社の主な制度上の違いを一覧で比較します。
| 比較項目 | 有限会社(特例有限会社) | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|---|
| 新規設立 | 不可 | 可能 | 可能 |
| 設立最低費用 | ー(現在は新設不可) | 約20万円〜 | 約6万円〜 |
| 社会的知名度・信用度 | 歴史があり高い | 極めて高い | 定着しつつあるが発展途上 |
| 役員の任期 | 無制限 | 原則2年(最長10年まで延長可) | 無制限(任期なし) |
| 決算公告の義務 | なし | あり | なし |
| 株式上場 | 不可 | 条件を満たせば可能 | 不可 |
資金力や知名度を重視して広く事業を展開したい場合は株式会社、初期費用や維持コストを抑えて小規模かつ柔軟に事業を開始したい場合は合同会社を選択するのが適しています。
4. 有限会社を株式会社へ変更する手続きについて

現在「特例有限会社」として事業を継続している会社は、適切な手続きを踏むことで通常の「株式会社」へと移行できます。
有限会社から株式会社へ変更することにより、世間的な認知度や信用力の向上、役員構成や任期の柔軟化など、さまざまなメリットを得ることが可能です。
4.1 商号変更による通常の株式会社への移行
特例有限会社から株式会社への移行は、会社を一度解散して新規に設立し直すのではなく、「商号変更による移行手続き」を行うことで完了します。
この手続きは、特例有限会社の解散登記と株式会社の設立登記を、法務局において同時に申請する形で行われます。
具体的な手続きの流れと押さえておくべき主なポイントは以下の通りです。
はじめに、株主総会を開催して定款変更の決議を行います。有限会社から株式会社への変更は重大な決定となるため、発行済株式の総数の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を得る「特別決議」が必要です。
この特別決議において、商号を「有限会社◯◯」から「株式会社◯◯」へ変更する旨や、新たな定款案を承認します。
次に、会社のルールである定款を株式会社の法律に合わせて見直します。
特例有限会社には役員の任期が存在しませんでしたが、株式会社へ変更する場合は役員の任期設定が必須となります。
株式会社の役員任期は原則2年(取締役の場合。定款で最長10年まで伸長可能)となるため、任期に関する規定を新たに設ける必要があります。
株主総会での承認後、本店所在地を管轄する法務局へ登記申請を行います。
特例有限会社の解散登記申請書と株式会社の設立登記申請書は、必ずセットで同時に提出しなければなりません。
登記手続きが完了した時点で、法律上正式に株式会社としての運用が開始されます。
4.2 移行にかかる登録免許税などの費用
有限会社から株式会社へ変更する際には、法務局へ納める登録免許税などの実費が発生します。
事前に必要な費用内訳を把握しておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。
移行手続きにかかる主な費用の概要は以下の通りです。
| 費用の項目 | 内容・計算方法 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 特例有限会社の解散登記(登録免許税) | 商号変更に伴う解散の手続きに必要な税金 | 30,000円 |
| 株式会社の設立登記(登録免許税) | 資本金の額の1000分の7(最低60,000円) | 60,000円〜 |
| 定款の認証費用 | 商号変更による移行のため公証人による認証は不要 | 0円 |
| 司法書士への依頼報酬(任意) | 書類作成および登記申請代行の費用 | 50,000円〜100,000円程度 |
法務局に支払う登録免許税は、解散登記の30,000円と設立登記の最低60,000円を合わせて、最低でも合計90,000円が必要です。
なお、資本金の額が約857万円を超える場合には、設立登記の税額(資本金の0.7%)が60,000円を上回るため、その分実費が増額されます。
通常の株式会社を新設する場合には公証役場での定款認証費用(約3万円〜5万円)がかかりますが、商号変更による株式会社への移行では公証人の定款認証が不要なため、認証費用はかかりません。
自社で書類を作成して登記申請を行うことも可能ですが、定款の書き換えや同時申請を行う登記書類の作成には専門知識が必要です。
不備なく確実に手続きを完了させるため、司法書士などの専門家へ代行を依頼する場合は、別途5万円から10万円程度の報酬費用を見込んでおくとよいでしょう。
5. まとめ
2006年の会社法改正により、現在は有限会社を新しく作ることができません。
どうしても有限会社の経営者になりたい場合は、M&Aなどを利用して既存の特例有限会社を買収する手法をとる必要があります。
これから新しく会社を設立する場合は、株式会社または合同会社のどちらかを選択しましょう。
それぞれの特徴や設立コストを比較し、自社の事業計画に合わせた選択が重要です。
また、既存の有限会社は手続きを行うことで株式会社へ移行することも可能です。

