会社設立の準備で、定款に記載する「事業目的」の書き方にお困りではありませんか?
事業目的は、法務局の審査はもちろん、将来の事業展開や金融機関からの融資にも影響する重要な項目です。
結論から言うと、事業目的の作成は「適法性・営利性・明確性」という3つの基本ルールを押さえることが全てです。
本記事では、このルールに沿って、審査に一発で通る書き方のポイントから、そのまま使える業種別の具体例、許認可事業の注意点まで徹底解説。
この記事を読めば、誰でも迷わず、将来を見据えた最適な事業目的を作成できます。
会社設立時の事業目的とは
会社設立時の「事業目的」とは、その会社がどのような事業を行って利益を追求するのかを具体的に明文化したものです。
会社を設立する際には、必ずこの事業目的を決定し、会社の根本規則である「定款(ていかん)」に記載しなければなりません。
そして、その定款をもとに法務局で設立登記を行うことで、事業目的は「登記簿謄本(登記事項証明書)」にも記載され、誰でも閲覧できる公式情報となります。
単に「何をするか」を決めるだけでなく、会社の社会的信用や将来の事業展開、さらには金融機関からの融資にも影響を与える、会社経営の根幹をなす非常に重要な項目です。
そもそも事業目的がなぜ重要なのか
事業目的の決定は、会社設立手続きにおける形式的な作業の一つではありません。
会社の方向性を内外に示し、円滑な事業運営を支えるために、以下のような複数の重要な役割を担っています。
まず、事業目的は会社の「顔」として、取引先や金融機関からの信用を左右します。
登記簿謄本を確認すれば誰でもその会社の事業目的を知ることができるため、具体的で分かりやすい事業目的が記載されていれば、取引先は安心して契約を結ぶことができます。
逆に、事業目的が曖昧だったり、実態と乖離していたりすると、不信感を与えかねません。
また、金融機関から融資を受ける際の審査においても、事業計画書と照らし合わせて事業目的がチェックされます。
明確な事業目的は、事業の実現可能性や将来性を示す重要な判断材料となるのです。
さらに、建設業や飲食業、古物商など、事業を開始するにあたって国や都道府県から許認可を得る必要がある業種では、事業目的にその事業内容が明記されていることが許認可取得の絶対条件となります。
将来的に参入する可能性がある事業も、あらかじめ目的に含めておくことが重要です。
法的な観点からは、会社は定款に記載された事業目的の範囲内でしか活動できません。
役員が事業目的の範囲を逸脱した行為によって会社に損害を与えた場合、任務懈怠責任を問われる可能性もあります。
事業目的は、会社の活動範囲を明確に定め、健全な会社運営を担保する役割も果たしているのです。
定款に記載する事業目的の役割
会社の設立にあたって作成する「定款」は、会社の組織や運営に関するルールを定めた「会社の憲法」ともいえる重要な書類です。
そして、事業目的は、この定款に必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」の一つと会社法で定められています。
もし定款に事業目的の記載がなければ、その定款自体が無効となり、会社の設立登記申請は法務局で受理されません。
つまり、事業目的を定めなければ、会社を設立することすらできないのです。
定款に記載される事項には、その重要度に応じて以下の3種類があります。
| 記載事項の種類 | 内容 | 記載がない場合の効果 |
|---|---|---|
| 絶対的記載事項 | 必ず記載しなければならない事項。(目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、発起人の氏名又は名称及び住所) | 定款自体が無効となる |
| 相対的記載事項 | 記載がなくても定款の効力に影響はないが、記載しなければその効力が認められない事項。(役員の任期伸長、株式の譲渡制限など) | その事項に関する効力が生じない |
| 任意的記載事項 | 会社が任意で記載できる事項で、法律に違反しない限り有効。(事業年度、役員の員数など) | 特に影響はない |
上記の表が示す通り、事業目的は会社が成立するための根幹をなす情報です。
定款に記載された事業目的は、そのまま登記情報として公示され、会社の法的活動範囲を定義づけるという極めて重要な役割を担っています。
事業目的の書き方における3つの基本ルール

会社の事業目的を定める際には、法務局の登記官による審査を通過するために、守るべき3つの基本的なルールが存在します。
それは「適法性」「営利性」「明確性」です。
これらのルールは、会社の信頼性や将来の事業展開にも関わる重要な要素です。一つずつ詳しく見ていきましょう。
ルール1 適法性
事業目的の第一のルールは「適法性」です。
これは、事業内容が法律や条例に違反しておらず、公序良俗に反していないことを意味します。
当たり前のことのように聞こえますが、登記申請において非常に重要なポイントです。
例えば、「覚醒剤の輸入販売」や「殺人の請負」といった犯罪行為はもちろん、「脱法ハーブの販売」のように法律のグレーゾーンを狙った事業も認められません。
法務局の登記官は、事業目的が適法であるかを厳しく審査します。
もし違法な事業や公序良俗に反する事業が目的に含まれている場合、その定款は無効となり、登記申請は却下されてしまいます。
また、事業内容によっては特定の法律(例:古物営業法、宅地建物取引業法など)の規制を受ける場合があります。
その際は、法律の範囲内で事業を行う旨を明確に記載する必要があります。
ルール2 営利性
株式会社や合同会社といった会社形態は、事業を通じて利益を上げ、それを株主や社員に分配することを目的としています。
そのため、定款に記載する事業目的にも「営利性」が求められます。
具体的には、対価を得て商品やサービスを提供するなど、利益を追求する活動であることが必要です。
「慈善活動」「ボランティア活動」「学術研究」といった非営利活動そのものを主たる事業目的にすることはできません。
これらの活動を主に行いたい場合は、NPO法人や一般社団法人といった別の法人格を検討する必要があります。
もちろん、企業の社会的責任(CSR)の一環として利益の一部を寄付したり、社会貢献活動を行ったりすることは問題ありません。
しかし、会社の根本的な目的としては、あくまで利益を上げる事業が記載されていなければならないのです。
ルール3 明確性
事業目的は「明確性」も重要なルールです。
これは、事業内容が具体的であり、誰が読んでも客観的に理解できる言葉で表現されていることを指します。
登記官はもちろん、金融機関、取引先、顧客といった第三者が見ることを常に意識しましょう。
専門用語や社内用語、一般的でない造語、抽象的すぎる表現は避けるべきです。
例えば、単に「サービス業」や「コンサルティング」と記載するだけでは、具体的に何を行う会社なのかが全く伝わりません。
事業内容が不明確だと、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
- 法務局の登記官が事業内容を判断できず、登記申請が補正(修正)対象となる
- 金融機関から融資を受ける際に、事業計画の信頼性が低いと判断される
- 取引先が何をしている会社か分からず、信用を得にくい
- 許認可が必要な事業の場合、目的の記載が不十分で申請が通らない
事業目的を記載する際は、「一般的な辞書に載っている言葉を使う」ことを一つの目安にすると良いでしょう。
以下に、抽象的な表現と具体的な表現の例を挙げます。
| 抽象的でNGな例 | 具体的でOKな例 |
|---|---|
| コンサルティング業務 | 経営コンサルティング業、ITコンサルティング業 |
| インターネット関連事業 | インターネットを利用した各種情報提供サービス、Webサイトの企画、制作及び運営 |
| ものづくり | 工業用プラスチック製品の製造及び販売 |
| サポート業務 | 企業の経理、総務、人事に関する事務代行業務 |
このように、誰が見ても事業の輪郭がはっきりと分かるように、具体的な言葉で記載することが求められます。
法務局の審査に通る事業目的の書き方とポイント

事業目的の基本ルールを踏まえた上で、ここでは法務局での登記手続きをスムーズに進め、かつ将来の事業運営にも支障が出ないようにするための、より実践的な3つのポイントを解説します。
登記官による審査をクリアすることはもちろん、将来の事業展開や融資、取引における信用にも関わる重要な部分です。
以下のポイントをしっかり押さえて、戦略的な事業目的を作成しましょう。
将来の事業展開を見据えた書き方
会社設立時に記載する事業目的は、現在行っている事業だけである必要はありません。
むしろ、将来的に展開する可能性のある事業もあらかじめ記載しておくことが非常に重要です。
なぜなら、会社設立後に事業目的を追加・変更する場合、株主総会での特別決議を経た上で、法務局への変更登記申請が必要になるからです。
この手続きには、登録免許税として3万円の費用がかかるだけでなく、司法書士への依頼費用や手間も発生します。
設立時に、近い将来に着手する可能性が高い事業や、関連して展開しうる事業を盛り込んでおくことで、こうした将来的なコストと手間を削減できます。
例えば、Webサイト制作を主業務とする会社が、将来的にWebマーケティング支援や自社メディア運営を手がける可能性があるなら、以下のように記載しておくと良いでしょう。
- ウェブサイト、ウェブコンテンツ及びデジタルコンテンツの企画、制作、販売、運営及び管理
- インターネットを利用した広告代理店業及び各種情報提供サービス
- 経営コンサルティング業務
そして、事業目的の最後には「その他前各号に附帯又は関連する一切の事業」という一文を必ず加えるようにしましょう。
これは、記載した事業目的と関連性のある業務であれば、広くカバーできる便利な文言です。
この一文があることで、事業の柔軟性を確保することができます。
許認可が必要な事業の注意点
事業を行うにあたって、国や地方公共団体からの「許認可」が必要な業種があります。
例えば、飲食業、建設業、不動産業、中古品売買(古物商)などが該当します。
これらの事業を行う場合、事業目的の書き方には特に注意が必要です。
なぜなら、定款の事業目的に、許認可の要件を満たす適切な文言が記載されていないと、そもそも許認可の申請が受理されないからです。
法務局の登記は通ったとしても、肝心の事業が始められないという事態に陥ってしまいます。
最も確実な方法は、許認可を申請する予定の行政庁(保健所、都道府県庁の担当課、警察署など)に、定款の事業目的にどのような文言を記載すればよいか事前に問い合わせて確認することです。
多くの場合、許認可申請の手引きやウェブサイトに記載例が示されていますので、その文言をそのまま使用するのが安全です。
以下に、許認可が必要な事業と、その事業目的の記載例をまとめました。
| 業種 | 必要な許認可(例) | 事業目的の記載例 |
|---|---|---|
| 飲食業 | 飲食店営業許可 | 飲食店の経営 |
| 中古品売買 | 古物商許可 | 古物営業法に基づく古物商 |
| 建設業 | 建設業許可 | 土木工事業、建築工事業、内装仕上工事業(※許可を取得したい業種を具体的に記載) |
| 不動産業 | 宅地建物取引業免許 | 宅地建物取引業、不動産の売買、仲介、賃貸及び管理 |
| 人材紹介 | 有料職業紹介事業許可 | 有料職業紹介事業 |
| 旅客運送 | 一般旅客自動車運送事業許可 | 一般旅客自動車運送事業(タクシー事業など) |
記載する事業目的の適切な数
事業目的はいくつまで記載できるのか、という疑問を持つ方も多いですが、法律上の上限はありません。
しかし、だからといって無数に記載するのは避けるべきです。
事業目的の数が多すぎると、「何の会社なのか実態が分かりにくい」という印象を外部に与えてしまうリスクがあります。
特に、金融機関から融資を受ける際の審査では、事業内容の具体性や計画性が重視されるため、事業目的が雑多に羅列されていると、事業の軸が定まっていないと判断され、マイナスの評価につながる可能性があります。
また、取引先が会社の登記情報を確認した際に、信用面で不安を抱かせる一因にもなり得ます。
一方で、数が少なすぎると、少し事業内容を広げたいだけですぐに変更登記が必要になり、前述の通り手間とコストがかかります。
そこで、一般的には事業目的の数は10個前後が適切な目安とされています。
以下の3つの視点で整理すると、バランスの取れた事業目的を考えやすくなります。
- すぐに始める事業:会社の主軸となる事業
- 1〜3年以内に始める可能性が高い事業:主軸事業から派生する、あるいは関連性の高い事業
- 将来的に展開したい事業:長期的なビジョンとして考えている事業
これらの事業を具体的にリストアップし、最後に「その他前各号に附帯又は関連する一切の事業」の一文を加えることで、事業の現状と将来の展望を的確に示しつつ、柔軟性も確保した事業目的を作成することができます。
【業種別】事業目的の書き方具体例集

会社の事業目的は、定款に記載する上で非常に重要な項目です。
しかし、いざ書こうとすると「具体的にどう書けばいいのか分からない」と悩む方も少なくありません。
ここでは、主要な業種別に、法務局の登記審査に通りやすく、かつ将来の事業展開にも対応できる事業目的の書き方と具体例を詳しく解説します。
ご自身の事業に最も近いものを参考に、アレンジしてご活用ください。
IT・Webサービス業の具体例
IT・Webサービス業は技術の進歩が速く、事業内容も多岐にわたります。
そのため、現在の事業だけでなく、将来的に展開する可能性のあるサービスも網羅的に記載しておくことが重要です。
「ソフトウェア」「アプリケーション」「インターネット」「Webコンテンツ」などのキーワードを使い、提供するサービスを具体的に表現しましょう。
システム開発・アプリ開発
システムやアプリケーションの開発を行う場合の記載例です。
開発から販売、その後の保守・運用まで、一連の業務フローを記載するのが一般的です。
- コンピュータソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアの企画、研究、開発、設計、製造、販売、保守、管理、運営及びコンサルティング
- 情報処理サービス業及び情報提供サービス業
- インターネットを利用した各種サービスの企画、開発、制作、販売、配信、運営及び管理
- IT技術に関する教育、研修事業及びコンサルティング業務
- 上記各号に附帯関連する一切の事業
ポイントは「企画、開発、設計、販売、保守」のように、事業の各工程を網羅的に記載することです。
これにより、受託開発だけでなく自社サービスの展開や、技術サポートといった関連業務もスムーズに行えるようになります。
最後の「上記各号に附帯関連する一切の事業」という一文は、定款に記載した目的に直接関連する事業であれば、定款変更なしで行えるようにするための決まり文句です。
Webサイト制作・Webデザイン
Webサイト制作を主軸とする場合、制作だけでなく、その後の運用・保守や、関連するマーケティング支援なども含めておくと事業を拡大しやすくなります。
- ウェブサイト、ウェブコンテンツ及びデジタルコンテンツの企画、デザイン、制作、販売、運営、管理及び保守
- インターネットを利用した広告業及び広告代理店業
- 企業のマーケティング、ブランディング及びプロモーションに関するコンサルティング
- ロゴマーク、キャラクター、その他グラフィックデザインの企画及び制作
- 上記各号に附帯関連する一切の事業
Webサイト制作後の運用代行や集客支援(インターネット広告)も視野に入れ、事業目的に含めておくと、クライアントに対してワンストップでサービスを提供しやすくなります。
将来的にデザインスキルを活かしてロゴ制作などを行う可能性があれば、それも記載しておくと良いでしょう。
コンサルティング業の具体例
コンサルティング業は対象とする分野が非常に広いため、「何の」コンサルティングを行うのかを明確に示す必要があります。
「経営コンサルティング」のような包括的な表現と、より具体的な分野を組み合わせるのがおすすめです。
- 経営コンサルティング業務
- 企業の財務、人事及び労務に関するコンサルティング業務
- マーケティングリサーチ並びに営業活動に関するコンサルティング
- 各種セミナー、講演会、研修の企画、立案、開催及び運営
- 書籍、雑誌その他印刷物及び電子出版物の企画、執筆、編集、出版及び販売
- 上記各号に附帯関連する一切の事業
コンサルティング業務から派生しやすいセミナー開催や出版などもあらかじめ記載しておくことで、事業の多角化に柔軟に対応できます。
特定の専門分野(例:医療、IT、環境など)に特化する場合は、「医療機関に対する経営コンサルティング」のように、より具体的に記載することも有効です。
飲食業の具体例
飲食店の経営には、保健所の「飲食店営業許可」が必要です。
事業目的には、この許可申請の際に審査官が事業内容を理解できるよう、明確に記載することが求められます。
また、テイクアウトやデリバリー、オンライン販売など、現代の多様な販売形態を想定しておきましょう。
- 飲食店の経営、企画及び運営
- 弁当、惣菜、パン、菓子の製造及び販売
- 食料品、清涼飲料水及び酒類の販売
- ケータリングサービス及び出張調理業務
- インターネットを利用した食料品及び飲料の通信販売
- 上記各号に附帯関連する一切の事業
単に「飲食店の経営」とするだけでなく、将来的に展開する可能性のあるテイクアウト(弁当、惣菜の製造販売)やECサイトでの販売(通信販売)も記載しておくことが、後の事業展開をスムーズにする鍵となります。
カフェでコーヒー豆を販売したり、レストランでオリジナルソースを販売したりするケースもこれに含まれます。
不動産業の具体例
不動産業を行うには、「宅地建物取引業」の免許が必要になるケースが多く、事業目的の記載は特に重要です。
免許を申請する行政庁が、会社が宅建業を行うことを明確に理解できるよう、「売買」「賃貸」「仲介」「管理」といったキーワードを正確に用いる必要があります。
- 不動産の売買、賃貸、仲介、管理及びその代理
- 不動産の有効活用に関する企画、調査及びコンサルティング
- 建物の内外装工事の設計、施工、監理及び請負
- 損害保険代理業及び生命保険の募集に関する業務
- 上記各号に附帯関連する一切の事業
「不動産の売買、賃貸、仲介、管理」は、宅建業免許を申請する際の基本となる記載です。
これに加えて、物件の価値を高めるリフォーム事業や、顧客に火災保険などを提案するための保険代理業も入れておくと、事業の幅が大きく広がります。
小売・卸売業の具体例
小売・卸売業では、取り扱う商材をある程度具体的にしつつ、将来の品目拡大にも対応できるよう幅を持たせた書き方が求められます。
「〜等」という表現を活用したり、販売チャネルを広く想定したりするのがポイントです。
実店舗だけでなく、インターネット通販や輸出入も視野に入れておくと良いでしょう。
| 商材のジャンル | 事業目的の記載例 |
|---|---|
| アパレル | 衣料品、服飾雑貨、装身具、履物等の企画、製造、販売及び輸出入 |
| 食品・飲料 | 食料品、清涼飲料水、酒類、健康食品の販売及び輸出入 |
| 雑貨 | 日用品雑貨、文房具、家具、室内装飾品の企画、販売及び輸出入 |
| ECサイト全般 | インターネットを利用した各種商品の通信販売 |
「衣料品、服飾雑貨等」のように「等」を用いることで、記載した品目以外の関連商品も扱える余地を残すことができます。
また、仕入れだけでなく自社ブランドの展開も考えるなら「企画、製造」を、海外との取引を想定するなら「輸出入」を加えておきましょう。
「インターネットを利用した各種商品の通信販売」という目的を入れておけば、将来的にどんな商材をECサイトで扱うことになっても対応可能です。
これはNG!事業目的の書き方で避けるべきこと

会社の事業目的は、定款に記載し登記する必要がある重要な項目です。
しかし、書き方を誤ると法務局での登記申請が受理されなかったり、後々の事業運営に支障をきたしたりする可能性があります。
ここでは、事業目的を記載する際に絶対に避けるべきNGパターンを具体的に解説します。
抽象的すぎる表現
事業目的の書き方には「明確性」が求められます。
これは、公証人や登記官、そして取引先や金融機関などの第三者が見て、その会社が何をやっているのかを具体的に理解できる必要があるためです。
あまりにも抽象的で漠然とした表現は、事業内容が不明確であると判断され、定款認証や登記申請の段階で修正を求められる原因となります。
例えば、以下のような表現は避けるべきです。
| NGな表現の例 | 改善後の表現の例 | NGな理由 |
|---|---|---|
| サービス業 | 飲食店業、学習塾の経営、経営コンサルティング業 | 「サービス業」の範囲が広すぎて、具体的な事業内容が全く分かりません。 |
| コンサルティング事業 | IT戦略に関するコンサルティング、人事制度に関するコンサルティング | 何のコンサルティングを行うのかが不明確です。対象分野を特定する必要があります。 |
| 商業 | 食料品の小売及び卸売、衣料品の輸入及び販売 | 何を売買するのかが分かりません。取り扱う商材を具体的に記載することが望ましいです。 |
| インターネット関連事業 | Webサイトの企画、制作、保守及び運営、インターネットを利用した各種情報提供サービス | 事業範囲が広範にわたるため、より具体的な業務内容を示す必要があります。 |
ポイントは「誰が読んでも事業内容を誤解なく理解できるか」という視点です。
「各種」「その他」といった言葉の多用も、事業内容を曖昧にするため避けた方が賢明です。
法令で禁止されている事業
会社の事業目的は、「適法性」のルールに従う必要があります。
当然のことながら、公序良俗に反する事業や、法律で明確に禁止されている行為を事業目的として記載することはできません。
このような目的が一つでも含まれていると、定款自体が無効と判断され、登記申請は絶対に受理されません。
以下に、法令違反となる事業目的の例を挙げます。
- 賭博場の開帳、運営
- 麻薬、覚醒剤等の違法薬物の売買
- 殺人の請負、あっせん
- ねずみ講、マルチ商法などの無限連鎖講の運営
- その他、刑法や各種取締法に違反する行為全般
また、法律違反に直接該当しなくても、弁護士や医師、税理士などの特定の資格がなければ行えない「独占業務」を、資格がないにもかかわらず事業目的として記載することも認められません。
例えば、弁護士資格を持たない人が「法律事務」や「訴訟代理」を事業目的に掲げることはできません。
もし関連業務を行いたい場合は、「法務に関する書類作成の補助」「法務手続きに関するコンサルティング」のように、資格がなくても行える範囲の表現に留める必要があります。
事業目的を変更・追加する方法と手続き

会社設立時に定めた事業目的も、会社の成長や市場の変化に伴い、変更や追加が必要になるケースは少なくありません。
事業目的を変更・追加するには、法務局での手続きが必須です。
ここでは、その具体的な方法と流れを解説します。
株主総会の特別決議が必要
事業目的の変更は、会社の憲法ともいえる「定款」の記載内容を変更する重要な行為です。
そのため、株主総会を招集し、「特別決議」による承認を得なければなりません。
特別決議は、会社の重要な意思決定に用いられるもので、普通決議よりも可決要件が厳しく設定されています。
具体的には、以下の両方を満たす必要があります。
- 議決権を行使できる株主の過半数が出席した株主総会であること
- 出席した株主が持つ議決権の3分の2以上の賛成があること
この特別決議を経て、初めて定款の事業目的を変更することが可能になります。
決議が完了したら、その内容を証明する「株主総会議事録」を必ず作成してください。
この議事録は、後の登記申請で必要不可欠な書類となります。
登記申請の手続きと費用
株主総会で定款変更が決議されただけでは、その変更を第三者に対して主張することはできません。
決議の日から2週間以内に、会社の所在地を管轄する法務局へ「変更登記申請」を行う必要があります。
この期限を過ぎると過料(罰金)の対象となる可能性があるため、速やかに手続きを進めましょう。
登記申請の一般的な流れと、発生する費用は以下の通りです。
手続きの主な流れ
- 株主総会を招集し、事業目的の変更・追加について特別決議を行う。
- 決議内容を記載した「株主総会議事録」を作成する。
- 法務局のウェブサイトなどから「株式会社変更登記申請書」をダウンロードし、必要事項を記入する。
- 作成した申請書と株主総会議事録などの必要書類を揃え、管轄の法務局に提出する。(持参、郵送、オンライン申請が可能)
変更登記にかかる費用
事業目的の変更登記には、主に登録免許税と、専門家に依頼する場合の報酬が発生します。
| 費用の種類 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 30,000円 | 法務局に納める税金です。事業目的をいくつ追加・変更しても、1回の申請につき一律この金額です。 |
| 司法書士への報酬 | 30,000円~50,000円程度 | 手続きを司法書士に依頼する場合に発生する費用です。書類作成から申請代行までを任せることができます。 |
すべての手続きが完了し、登記が受理されると、登記事項証明書(登記簿謄本)に新しい事業目的が反映されます。
金融機関からの融資や新たな取引先との契約の際には、この登記事項証明書の提出を求められることが多いため、手続き完了後は必ず最新のものを取得して内容を確認しておきましょう。
まとめ
会社の事業目的は、定款に必ず記載しなければならない重要事項です。
法務局の審査を通過し、将来の事業展開をスムーズにするためには、「適法性・営利性・明確性」の3つの基本ルールを守ることが不可欠です。
将来行う可能性のある事業もあらかじめ記載しておけば、後の変更手続きにかかる手間と費用を削減できます。
本記事で紹介した業種別の具体例や注意点を参考に、ご自身の事業計画に合った事業目的を作成しましょう。
判断に迷う場合は、司法書士などの専門家への相談も有効です。
